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「キャッチ&リリースで資源のコントロールは可能か」
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「キャッチ&リリースで資源のコントロールは可能か?」
〜資源保護と生息数抑制〜


1.生物の資源量変動を表すモデル

 生物資源を枯渇しないように利用したり、あるいは生息量を抑制したりする場合、その生物の資源量変動を予測することが、有効な利用方法や抑制方法を検討することに役立ちます。


1−(1).ロジスティックモデル

 生物の資源量変動を表すモデルの一つにロジスティックモデルがあります。このモデルは最も基本的なモデルで、資源量の変動を予測するには、ここが出発点となります。

図−1−(1)

 図−1−(1)が、ロジスティックモデルをグラフに描いたものです。青い点で示される曲線が、資源量の変動を示しています。ここでは魚を対象としますので、縦軸の資源量は重量(トン、またはキログラム)、あるいは尾数となります。横軸の時間経過は年です。漁獲や、放流、環境の変動などが無視できる状態で、時間の経過とともに、資源量がどのように変化してゆくかを示しています。資源量は上にゆくほど大きく、時間の経過は、左から右へと進みます。

 黄色の点で、資源量変動の振る舞いが異なる二つの領域に分けることができます。黄色の点で、曲線の傾きが最大となります。曲線の傾きはその年の資源の増加量に比例します。ですから、資源量が黄色の量に達した年に、資源量の増加が最大となります。黄色の点から下側、領域IIでは、資源量が大きくなるほど増加量は大きくなります。黄色の点から上側、領域Iでは、資源量が大きくなるほど増加量は小さくなります。これらのことを数式で示すと、以下のようになります。

図−1−(2)

 式−1−(1)−(A)が、ある時点での増加量を示します。資源量の増加は、自然増加率()を一定とすると、魚は無限に増え続けます。しかし、実際はそうなりません。そこで、環境収容量()を仮定し、そこに近づくほど増加が頭打ちとなり、資源量が環境収容量()を越えないように、抑制項((Pt))を仮定します。資源量が大きくなるほど増加量が頭打ちになるので、抑制項は資源量の関数となります。この抑制項を、式−1−(1)−(B)のように仮定したものがロジスティックモデルです。グラフは、黄色い点で点対称となることが特徴です。


1−(2).領域Iではどんなどんなことが起こるのか

 この領域では、資源量が大きくなるほど増加量は小さくなります。このことを逆に言えば、資源量が小さくなるほど増加量が大きくなるということです。この領域では、ある年に、その年の増加量に匹敵するほどの魚を漁獲すると、翌年には漁獲量以上の増加が現れます。この現象は、よく密度効果などと言われます。黄色の点が、そのような現象の現れる限界点です。黄色の点で、増加量は最大となります。これを最大持続生産量(MSY)と言います。この時の資源量(MSYL)は、環境収容量の半分となります。領域Iでは、最大持続生産量(MSY)に匹敵する漁獲が続くようなことが無い限り、資源量が環境収用量の半分を下回ることはありません。


1−(3).領域IIではどんなことが起こるのか

 この領域では、資源量が大きくなるほど増加量は大きくなります。このことを逆に言えば、資源量が小さくなるほど増加量が小さくなるということです。この領域では、ある年に、その年の増加量に匹敵するほどの魚を漁獲すると、翌年には漁獲量以下の増加しか現れません。そうなれば、漁獲量を前年よりも少なくする必要が出てきます。このような規制がうまく実施できないと、年とともに資源量も漁獲量も減少してゆきます。漁獲量の減少は、資源量が減って魚の生息密度が低下することでも起こりますから、漁獲を維持しようとするとコストも増大してゆきます。そのような状態に陥ってしまうと、禁漁にして資源量が領域Iに達するまで回復を待つような対策が必要となってきます。資源量やその増加を正確に予測することは困難ですから、この領域では乱獲状態に陥りやすくなります。領域IIでは、ときには禁漁にするなどの厳しい漁獲の制限が必要となります。




2.キャッチ&リリースで資源のコントロールは可能か

 資源保護を目的と掲げ、キャッチ&リリース専用区間を設ける釣り場が、日本でも出てくるようになりました。また、外来魚問題ではこのリリース行為が問題になっています。そこで、この項では、資源保護と生息数抑制の二つの面から、キャッチ&リリースについて考察します。


2−(1).リリース後の死亡率

 例えば、リリース後の生存率が90%とするなら、キャッチ&リリースによる死亡率は10%となります。これは、魚をリリースしたら、そのうち死亡する確率が10%だというとのは、少し違います。キャッチ&リリースという行為を10回行なったとすれば、魚に致命的な損傷を与えてしまうことが、1回はあるということです。例えば、リリース後の生存率が90%のとき、延べ10,000尾の魚をキャッチ&リリースすれば、1,000尾が死亡します。この時、10回以上キャッチ&リリースを経験する魚は、ほぼゼロとなります。


2−(2).魚に致命的な損傷を与える段階

 キャッチ&リリースによって魚に致命的な損傷を与える段階には、大きく分けると二つあります。

 一つは、取り込んでからリリースまでの段階です。この段階は、釣りそのものとはあまり関係ありません。ですから、魚の扱いの知識を普及、啓発することで、この段階での死亡率を下げることは比較的容易です。

 二つ目は、釣り針にかかってから取り込むまでの段階です。この段階は、仕掛けや釣り方などが関係する、釣りそのものです。例えば、かえしのない針を使う、一本の竿あたりの針を制限する、魚とのやりとを楽しまず手早く取り込む、またその為に丈夫な仕掛けを使う、もっと踏み込んでルアーを使わないなど、釣りそのものに踏み込む必要が、この段階での死亡率を下げるためには出てきます。


2−(3).キャッチ&リリースは資源保護に有効か?〜領域Iの場合

 年間の釣獲量と他の漁獲量など合わせても、最大持続生産量(MSY)に比べて十分に小さい場合は、釣り人の数が問題になります。釣り人を何かの理由で増やせない、あるいは増やすことが好ましくない場合には、釣獲量も増やせませんから、他の原因で資源量が減少しない限り、リリースしてもしなくても資源が枯渇する心配はありません。この場合にリリースを推奨することは、実質的な資源保護よりも、教育や啓発などの他の効果を目的とすることになります。釣り人をまだまだ増やせる、あるいは増やしたい場合には、リリースすることによって釣り人の数の上限を増やすことができます。他の理由で釣り人を制限しなければならない状態にならない限り、リリースは釣り人を増やす為に有効です

 年間の釣獲量と他の漁獲量など合わせると、最大持続生産量(MSY)に匹敵する場合は、リリースすることが資源保護に役立ちます


2−(4).キャッチ&リリースは資源保護に有効か?〜領域IIの場合

 年間の釣獲量と他の漁獲量など合わせても、その年の資源増加量に比べて十分に小さい場合は、釣り人の数が問題になります。釣り人を何かの理由で増やせない、あるいは増やすことが好ましくない場合には、釣獲量も増やせませんから、他の原因で資源量が減少しない限り、リリースしてもしなくても資源が枯渇する心配はありません。この場合にリリースを推奨することは、実質的な資源保護よりも、教育や啓発などの他の効果を目的とすることになります。釣り人をまだまだ増やせる、あるいは増やしたい場合には、リリースすることによって釣り人の数の上限を増やすことができます。他の理由で釣り人を制限しなければならない状態にならない限り、リリースは釣り人を増やす為に有効です

 年間の釣獲量と他の漁獲量など合わせると、その年の資源増加量に匹敵する場合は、リリースすることが資源保護に役立ちます。ただし、資源量やその増加を正確に予測することは困難です。この領域では資源量が小さくなるほど増加量が小さくなりますから、乱獲状態に陥りやすくなります。年々、漁獲量や釣獲量が減少しているようなら、禁漁にするなどの厳しい制限が必要となります。


2−(5).キャッチ&リリースは生息数抑制に有効か?〜領域Iの場合

 年間の釣獲量と他の漁獲量など合わせても、最大持続生産量(MSY)に比べて十分に小さい場合は、釣り人の数が問題になります。釣り人を何かの理由で増やせない、あるいは増やすことが好ましくない場合には、釣獲量も増やせませんから、他の原因で資源量が減少しない限り、リリースしてもしなくても生息数抑制に釣りは役に立ちません。この場合にリリースしないことを推奨することは、実質的な生息数抑制よりも、教育や啓発などの他の効果を目的とすることになります。釣り人をまだまだ増やせる、あるいは増やしたい場合には、リリースすることによって釣り人の数の上限を増やすことができます。他の理由で釣り人を制限しなければならない状態にならない限り、リリースは釣り人を増やす為に有効です

 しかしながら、釣り人を増やしたことによって、年間の釣獲量と他の漁獲量など合わせると、最大持続生産量(MSY)を上回ることが重要です。それができない場合は、リリースによって釣り人が増えても、釣りによって生息数を抑制することはできません


2−(6).キャッチ&リリースは生息数抑制に有効か?〜領域IIの場合

 年間の釣獲量と他の漁獲量など合わせても、その年の資源増加量に比べて十分に小さい場合は、釣り人の数が問題になります。釣り人を何かの理由で増やせない、あるいは増やすことが好ましくない場合は、釣獲量も増やせませんから、他の原因で資源量が減少しない限り、リリースしてもしなくても生息数抑制に釣は役に立ちません。この場合にリリースしないことを推奨することは、実質的な生息数抑制よりも、教育や啓発などの他の効果を目的とすることになります。釣り人をまだまだ増やせる、あるいは増やしたい場合は、リリースすることによって釣り人の数の上限を増やすことができます。他の理由で釣り人を制限しなければならない状態にならない限り、リリースは釣り人を増やす為に有効です

 しかしながら、釣り人を増やしたことによって、年間の釣獲量と他の漁獲量など合わせると、その年の資源増加量を上回ることが重要です。それができない場合は、リリースによって釣り人が増えても、釣りによって生息数を抑制することはできません。




参考文献:

水産資源解析学 水産・海洋ライブラリ5,山田作太郎・田中栄次,1999.03,成山堂書店.




2007年04月11日 辻井 豊


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