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琵琶湖およびに河川の魚類等の生息状況調査結果報告書(平成6年〜7年度)


琵琶湖および河川の魚類等の生息状況調査結果(概要)
 
 琵琶湖漁業は、琵琶湖の永い歴史の中で形成された生態系を基にして成立しており、生態系の的確な把握は漁業振興を図るためには重要な課題である。
 滋賀県水産試験場ではこれまで1911年〜1915年(明治44年〜大正4年)に「琵琶湖水産調査」、1953年(昭和28年)には「琵琶湖水位低下対策(水産物)調査」、また1969年(昭和44年)には「琵琶湖沿岸帯調査」を実施するなど、生態系の総合的な把握に努めてきた。
 以来、今日にいたるまで琵琶湖の環境は様変わりし、また外来生物の侵入等により生態系も大きく変化してきたことから、あらためて琵琶湖を中心とした生態系の現況を把握し、今後の水産振興対策、水産資源対策、生態系保全対策等の基礎資料を得ることとした。
 その手始めとして、琵琶湖、河川、内湖等、県下水域における魚類および甲殻類の生息状況を把握する一斉調査を実施した。
 
1. 調査方法
(1) 調査期間
  1994年(平成6年)4月〜1995年(平成7年)3月
 
(2) 調査準備
   「滋賀県漁業調整規則」により採捕の禁止期間、漁獲体型の制限、漁具漁法の制限および禁止等が定められており、また漁業権の設置されている水域もあることより、現地調査にあたっては、事前に水産課、漁業協同組合等に特別採捕許可の申請等、必要な措置を講じた。
   なお調査にあたっては、県下全域を網羅し、より正確に実態を把握するため、水産試験場の調査以外に漁業協同組合、漁業者等関係者に対し希少種を中心としたサンプル採集の協力を依頼した。
 
(3) 調査体制
   水産試験場職員全員が調査にあたることとし、調査場所(河川上流、河川中・下流、内湖、琵琶湖沿岸、琵琶湖沖合等)ごとに調査班を編成し、1地点3〜4名のメンバーで調査した。
 
  【総括】
場長 平塚 忠征
主任専門員 高橋 誓
  【河川上流・エリ漁獲標本調査班…漁場加工係】
  里井 晋一
  太田 豊三
  森田 尚
  二宮 浩司
  宮岡 剛 …調査班長、とりまとめ責任者
  【河川中下流・内湖・琵琶湖沖合・補完調査班…資源係】
  山中 治 …調査概要とりまとめ責任者
  井嶋 重尾
  遠藤 誠
  井出 充彦…調査班長、とりまとめ責任者
  孝橋 賢一
  酒井 明久
  【琵琶湖沿岸調査班…増殖係】
  水谷 英志
  氏家 宗ニ
  藤原 公一…調査班長、とりまとめ責任者
  小林 徹
  井戸本純一
  臼杵 崇広
  根元 守仁
 
(4) 調査対象
   琵琶湖および河川等県下に生息している魚類および甲殻類(エビ類・カニ類のみ)とし、以下両者をあわせて「魚類等」という。
 
(5) 調査地点
   県下内陸部および琵琶湖の魚類等の生息状況を総合的に把握するために、県下を5地域に区分し、各調査地域から河川、内湖など水域別に一定数の調査地点を次のとおり設定した。
 
内陸部  各地域ごとに1河川(上流2地点、中・下流2地点)を原則とした。各地域ごとに1内湖(1地点)を原則とした。
 
琵琶湖  各地域ごとに沿岸2地点、沖合1地点を原則とした。また、各水域ごとにエリの漁獲標本調査1箇所を原則とした。
 
  ※ 沿岸は概ね水深7m以浅、沖合は水深20m以上の水域
 
(6) 調査時期
   内陸部(河川、内湖)は夏期、冬期の年2回、琵琶湖(沿岸、沖合、エリ漁獲標本調査)は春期、夏期、終期、冬期の年4回を原則とした。
 
(7) 採集漁具
   調査場所の状態によって、適している漁具、使用できる漁具はさまざまであると考えられるので、使用する漁具は自由に選択するものとしたが、調査場所のほか、最低限、以下の内容を記録しておき、生息量に関する定量化の一助とすることとした。
 
  [投網]
  投網の目合いおよび投網の打数を記録する。
  [びんづけ]禁止漁具
  餌で誘引する。設置数、設置時間を記録する。
  [モンドリ]
  餌で誘引する。設置数、設置時間を記録する。
  [刺網]
  刺網の目合いおよび設置数、設置時間を記録する。
  [小型定置網(張網)]
  設置数、設置時間を記録する。
  [小型地曳網]
  地曳網を曳いた回数、距離を記録する。
  [電気ショッカー]禁止漁具
  使用回数、使用時間を記録する。
  [沖曳]
  曳網回数、距離、水深を記録する。
 
(8) 種の同定および計測
   現地採集調査では標本として持ち帰る尾数を1魚種・1漁具について50尾を限度とし、標本としない魚介類は尾数を数えて現地に戻した。
   持ち帰った標本については、種を同定し、すべての個体について体重および全長、体長を測定した。
 
2. 調査の実施状況
(1) 1994年(平成6年)4月〜1995年(平成7年)3月までの調査
   調査地点図(図1)のとおり、県下を5地域に区分し、それぞれ河川上流、河川中・下流、内湖、琵琶湖沿岸、琵琶湖沖合の調査地点を設定した。図中の英数字記号は次ページの表1中の調査地点の英数字記号と一致する。
 
(図1 調査地点図)へのリンク
 
   各調査地点ごとに、計測した時期別調査が、水草の異常繁茂や渇水等で調査できなかった場合もあり、表1に調査が計画どおりできた地点・時期に●印を付した。
 
(表1 調査の実施状況)へのリンク
 
(2) 1995年(平成7年)4月〜1996年(平成8年)3月までの調査
   上記1994年4月〜1995年3月までの調査で生息を確認できなかった魚類等のうち、滋賀県下ではすでに絶滅したと考えられるアオウオ、ニッポンパラタナゴ、アユモドキを除く魚類等を対象に、調査地点を限定せず、主に春期に生息確認調査を実施した。
 
3. 調査結果の概要
(1) 生息の確認された魚類等
   既存の調査文献により、これまでに琵琶湖および県下の河川で生息の確認されていた魚類、また今回の調査で生息の確認された魚類を表2に一覧表として示した。同様に甲殻類(エビ類・カニ類)を表3に示した。
   滋賀県水産試験場による1915年(大正4年)の琵琶湖水産調査報告をはじめとし、1993年(平成5年)までの各試験研究機関および研究者による県下の水生生物の生息に関する報告書によると、琵琶湖および県下河川で生息の確認された魚類は70種(亜種を含む)、甲殻類(エビ類・カニ類)は7種であった。そのうち、アオウオ、ニッポンバラタナゴ、アユモドキは、1991年(平成3年)に増補改訂された「湖国びわ湖の魚たち」では、滋賀県下ではすでに絶滅したと記述されている。
   今回、1994年の定点一斉調査において滋賀県下で生息の確認できた魚類は64種(このうち、ソウギョ、ビワコオオナマズは1994年中に捕獲されたことを漁業者から確認、ハリヨは醒井養鱒場の調査で確認)で、生息の確認できなかった魚類はヤマメ、カワバタモロコ、アオウオ、カワヒガイ、ニッポンバラタナゴ、アユモドキの6種であった。甲殻類(エビ類・カニ類)は6種の生息が確認され、タンカイザリガニの生息が確認できなかった。
   1994年の定点一斉調査で生息の確認できなかった魚類等は、文献や聞き取りをもとに、生息していそうなところを調査地点とし、1995年に生息確認の補完調査を実施した。その結果、ヤマメ、カワバタモロコ、タンカイザリガニの生息が、限られた水域で確認できた。
   今回(1994年〜1995年)の調査で最終的に生息の確認できなかった魚類等は、アオウオ、カワヒガイ、ニッポンバラタナゴ、アユモドキの4種であった。
 
(表2 これまでの調査で生息の確認されていた魚類と今回の調査で生息の確認された魚類)へのリンク
 
(表3 これまでの調査で生息の確認されていた甲殻類と今回の調査で生息の確認された甲殻類)へのリンク
 
(表2、表3に関する調査文献と注釈)へのリンク
 
(2) 魚類等の量的状況
   表4に今回の調査結果をもとに魚類の水域別生息状況の多寡を示した。 後述の水域別調査結果より、多くの地点(ある水域例えば河川上流で、調査した地点の半数以上)に生息しており、一定の採集努力あたりの採集数が多い(一定の採集努力により採集数をランク分けした時、調査した地点の半数以上で採集数が多いランクに該当する)魚種には★★★★印を付した。また多くの地点に生息しているが、採集数の少ない魚種には★★★印を、生息地点は少ないが(水域別調査地点の半数未満で生息)、採集数は多い魚種には★★印を、生息地点、採集数ともに少ない魚種には★印を、1995年の補完調査で生息の確認できた魚種には☆印を、漁業者等からの聞き取りにより生息の確認できた魚種には◇印を付した。
   同様にして表5に甲殻類(エビ類・カニ類)の生息状況の多寡を示した。表4、表5より、次のような点に留意して魚類等の滋賀県下における生息状況を類型化した。表4、表5において、ある水域例えば河川上流ではどういう魚類が多く、また少ないかという見方は正しいが、ある魚種例えばスナヤツメがどの水域に多いかあるいは少ないかという見方は採集方法(採集努力)が水域ごとに異なるので単純には比較できない。さらにこの表の生息数の多い少ないは採集結果によるものであり、水産試験場の試験採捕ではエリの標本採集を除き大型魚類を採捕することが難しいため、大型の魚種は実際より生息数が少なく表現されている。ただ魚種が大型であるほど(例えばビワコオオナマズのように)生息数が少なく、逆に小型であればあるほど(例えばヨシノボリのように)生息個体数が多いというのが自然界では一般的である。
 
  魚類等の現在の生息状況を類型化した。
  【琵琶湖および県下の河川等に普通に見られる魚類・甲殻類(41種類)】
  琵琶湖から河川の上流まで普通に見られる魚類・甲殻類(4種類)
  アユ・オイカワ・ウグイ・カマツカ
  琵琶湖で普通に見られるが、河川の中下流でも見られる魚類・甲殻類(20種類)
  ワカサギ・ビワマス・ハス・ホンモロコ・ビワヒガイ・ゼゼラ・スゴモロコ・デメモロコ・ニゴイ・コイ・ニゴロブナ・ゲンゴロウブナ・オオクチバス・ブルーギル・ヨシノボリ・ヌマチチブ・ウキゴリ・ウツセミカジカ・テナガエビ・スジエビ
  (ビワマスは本調査での採集数は少ないが、漁獲統計では年間30トン前後漁獲されていることによりこの類型に加えた。イサザは1994年次の漁獲統計では1トン以下であり、漁獲尾数としてはビワマスと大差ないと考えられたがこの類型からははずした。)
  主として河川の中・下流で普通に見られる魚類・甲殻類(8種類)
  スナヤツメ・ウナギ・アブラハヤ・ギンブナ・ギギ・ナマズ・ドンコ・アメリカザリガニ
  主として河川の上流で普通に見られる魚類・甲殻類(9種類)
  イワナ・アマゴ・カワムツ・タカハヤ・シマドジョウ・アカザ・カワヨシノボリ・カジカ・サワガニ
  【生息数が少ないと考えられる魚類・甲殻類(32種類)】
  特定の地域・水域にしか生息していない魚類・甲殻類(8種類)
  ヤマメ・カワバタモロコ・イトモロコ・ズナガニゴイ・アジメドジョウ・ホトケドジョウ・ハリヨ・タンカイザリガニ
  生息が偏在しかけていると考えられる魚類・甲殻類(11種類)
  ワタカ・ムギツク・ヤリタナゴ・アブラボテ・タイリクバラタナゴ・イチモンジタナゴ・シロヒレタビラ・カネヒラ・ドジョウ・スジシマドジョウ・メダカ
  放流した経緯があるが、再生産せず生息量の少ない魚類・甲殻類(3種類)
  ニジマス・ソウギョ・ハクレン
  全般的に生息量が少ないと考えられる魚類・甲殻類(10種類)
  タモロコ・モツゴ・アブラヒガイ・ツチフキ・ビワコオオナマズ・イワトコナマズ・カムルチー・イサザ・ヌマエビ・モクズガ二
  【生息の確認ができなかった魚類・甲殻類(4種類)】
  アオウオ・カワヒガイ・ニッポンバラタナゴ・アユモドキ
 
   琵琶湖および県下の河川等に普通に見られる魚類・甲殻類は、個々に詳しく検討すればニゴロブナのように昔に比べて非常に少なくなったため増殖対象魚種となっているものあるが、多くは今後も生息環境を保全することで維持できるものと考える。
   普通に見られる魚類の中でブルーギル、オオクチバス、ヌマチチブは侵入種であり、琵琶湖ではじめて確認されたのはそれぞれ1968年(昭和43年)(文献8)、1974年(昭和49年)(文献9)、1989年(平成元年)(文献7)である。また、1994年から琵琶湖でワカサギが急に増えだしたが、これらの魚類は食害や生息域・餌の競合等により在来の生態系を乱すことが危惧される。
   生息量の少ない魚類・甲殻類の中で、特定の地域・水域にしか生息していないもの、および生息が偏在しかけていると考えられるものは、生息環境の特異性を探らなければならないし、全般的に生息数の少ない魚類等についてはなぜ少ないのかを明らかにしなければならない。それぞれの水生生物が相互に関与することで生態系が維持されていることより、タナゴ類やドジョウ、メダカなどが普通に見られる琵琶湖や河川をよびもどすことができるよう、あらゆる方向から対策を講じる必要がある。
 
(表4 魚類の水域別生息状況の多寡)へのリンク
 
(表5 甲殻類の水域別生息状況の多寡)へのリンク
 
(3) 各水域における生息状況
1) 河川における生息状況
   河川における調査では、魚類52種(スナヤツメ、ウナギ、アユ、イワナ、ニジマス、ヤマメ、アマゴ、ビワマス、カワムツ、オイカワ、ハス、ウグイ、アブラハヤ、タカハヤ、タモロコ、ホンモロコ、ムギツク、モツゴ、ビワヒガイ、カマツカ、ゼゼラ、スゴモロコ、デメモロコ、イトモロコ、ニゴイ、ズナガニゴイ、コイ、ニゴロブナ、ゲンゴロウブナ、ギンブナ、ヤリタナゴ、アブラボテ、タイリクバラタナゴ、カネヒラ、ドジョウ、スジシマドジョウ、シマドジョウ、アジメドジョウ、ホトケドジョウ、ギギ、アカザ、ナマズ、メダカ、オオクチバス、ブルーギル、ドンコ、ヨシノボリ、カワヨシノボリ、ヌマチチブ、ウキゴリ、カジカ、ウツセミカジカ)、甲殻類(エビ類・カニ類)5種(ヌマエビ、テナガエビ、スジエビ、アメリカザリガニ、サワガニ)が採取された。またハリヨは醒井養鱒場の調査で生息を確認した。
   この中にはムギツクやズナガニゴイ、ヤリタナゴ、アブラボテ、アジメドジョウ、ホトケドジョウ、アカザ、メダカなど、採捕された採捕個体数が極端に少ない魚種があった。一方オオクチバスやブルーギル、ヌマチチブなどの侵入種が河川へも分布を広げていることが明らかとなった。
   河川における地点別魚類等の採集結果を表6-1、6-2に示した。1河川で上流地点、中流地点および下流地点の調査を行った河川は、姉川、愛知川、野洲川、安曇川の4河川である。姉川では魚類24種、甲殻類2種が採集され、愛知川では魚類28種、甲殻類2種、野洲川では魚類40種、甲殻類5種、安曇川では魚類27種、甲殻類2種が採集された。野洲川の魚類相は他に類を見ず豊富であった。今回調査を行った河川では魚道のない取水堰堤や落差工などを多数見かけた。野洲川にも魚類の遡上を阻む堰堤が多数あったが、このように魚類相が豊富であった要因として、まず河川規模が大きく自ずと河川環境が変化に富むことがあげられる。さらに重要なことは水の枯れにくい河川であるということである。調査を実施した1994年は初夏から初秋にかけて降雨が少なく、安曇川をはじめとして姉川、愛知川などの中流から下流にかけて河床が干上がった時期があったが、野洲川はかろうじて通水していた。また野洲川にはアジメドジョウのように湧水地帯で越冬する魚類やアブラボテのように湧水の流れる細流に棲む魚類が生息しており、清水の供給と水温を保証する湧水の存在も魚類等生物相を豊にする要因と考えられた。
 
2) 内湖における生息状況
   内湖の調査では魚類29種(ウナギ、ワカサギ、アユ、カワムツ、オイカワ、ハス、ワタカ、タモロコ、ホンモロコ、モツゴ、ビワヒガイ、カマツカ、ツチフキ、ゼゼラ、コイ、ニゴロブナ、ゲンゴロウブナ、ギンブナ、ヤリタナゴ、タイリクバラタナゴ、イチモンジタナゴ、メダカ、カムルチー、オオクチバス、ブルーギル、ドンコ、ヨシノボリ、ヌマチチブ、ウキゴリ)および甲殻類3種(テナガエビ、スジエビ、アメリカザリガニ)が採集された。
   これらはドンコを除き琵琶湖沿岸で採集された魚類等と同じ種類であるが、琵琶湖沿岸より採集種類は少なかった。ただし、後述の琵琶湖沿岸における魚類等の採集調査で、沿岸に生息していると考えられる魚類の中で採集できなかったワタカ、ツチフキ、およびイチモンジタナゴが内湖で採集されており、沿岸とは異なる内湖の環境が生物多様性の存続に必要であることが示唆された。
  内湖における地点別魚類等採集結果を表7に示した。
   内湖別では、余呉湖では魚類15種、甲殻類3種が採集され、伊庭内湖では魚類11種、甲殻類2種、西の湖では魚類23種、甲殻類3種、柳平湖では魚類3種、甲殻類2種、堅田内湖では魚類12種、甲殻類3種が採集された。
   オオクチバスは余呉湖と堅田内湖を除き採集され、ブルーギルは余呉湖を除き、ヌマチチブは柳平湖と堅田内湖を除き採集された。
   内湖においても生息種の多いところ、少ないところがあったが、西の湖のように面積が広く環境が多様な内湖ほど種組成が豊富であり、一方面積が狭く湖岸の形態や植生が単調である柳平湖ではオオクチバスとブルーギルのほかコイしか採集されず、かっては多数生息していたといわれるタナゴ類やフナ類が外来魚の侵入により減少あるいは駆逐されていることがわかった。
   余呉湖においては現在ワカサギとヌマチチブが優占種となっているが、ともにもともと余呉湖にいなかった魚類であることより、今後在来の魚類等が共存していけるのか注意を要する。
 
3) 琵琶湖沿岸における生息状況
   琵琶湖沿岸における魚類等採集結果を表8-1、8-2(小型定置網、小型底曳網による採集結果)および表9(エリ漁業による漁獲標本の採集結果)に示した。
   琵琶湖の沿岸帯では魚類41種(スナヤツメ、ウナギ、ワカサギ、アユ、ビワマス、カワムツ、オイカワ、ハス、ウグイ、アブラハヤ、ハクレン、タモロコ、ホンモロコ、モツゴ、ビワヒガイ、アブラヒガイ、カマツカ、ゼゼラ、スゴモロコ、デメモロコ、ニゴイ、コイ、ニゴロブナ、ゲンゴロウブナ、ギンブナ、ヤリタナゴ、タイリクバラタナゴ、シロヒレタビラ、カネヒラ、ドジョウ、スジシマドジョウ、ギギ、イワトコナマズ、カムルチー、オオクチバス、ブルーギル、ヨシノボリ、ヌマチチブ、イサザ、ウキゴリ、ウツセミカジカ)および甲殻類4種(ヌマエビ、テナガエビ、スジエビ、アメリカザリガニ)が採集された。
   琵琶湖沿岸で採集された魚類41種および甲殻類4種のうち、小型定置網および小型底曳網により採集できたのは魚類32種および甲殻類4種であった。小型定置網およ小型底曳網による採集調査では大型の魚類の採集が困難であったので、沿岸帯の調査を補完するために、エリ漁業による漁獲物の標本採集調査を実施した。エリ漁業は沿岸の定置網漁業であるが、湖岸から少し離れたところから垣網が始まりエリの先は水深20mに及ぶところがあるため、先の調査(およそ7m以浅で調査)以上に深いところに生息している魚類等が採集され、その結果、エリの漁獲物調査では魚類333種および甲殻類4種が採集された。エリの漁獲物調査により、新たに生息の確認できた魚類はスナヤツメ、ウナギ、ビワマス、ハクレン、ゲンゴロウブナ、ギンブナ、ギギ、イワトコナマズ、イサザである。逆に前述の小型定置網および小型底曳網調査でのみ採集された魚類はカワムツ、アブラハヤ、タモロコ、モツゴ、アブラヒガイ、タイリクバラタナゴ、ドジョウ、スジシマドジョウであった。
   また漁業者からの聞き取り調査により、魚類2種(ソウギョ、ビワコオオナマズ)および甲殻類1種(モクズガに)がエリで漁獲されたことを確認した。
   近年琵琶湖で生息の確認ができないアオウオ、ニッポンバラタナゴを除き、今回の琵琶湖沿岸部での採集調査およびエリ漁獲物の標本調査で琵琶湖沿岸に生息していると考えられる魚類の中で採集できなかったのは、ワタカとツチフキおよびイチモンジタナゴであった。また、採集はできたが、採集地点に偏りが見られるもの、あるいは採集尾数の少ない魚類はハクレン、アブラヒガイ、ゲンゴロウブナ、ヤリタナゴ、タイリクバラタナゴ、シロヒレタビラ、カネヒラ、スジシマドジョウ、ギギ、イワトコナマズ、カムルチーなどであった。
   一方、例年漁獲されていてもわずかであったワカサギが1994年夏期(7月中旬)にエリで急に大量に漁獲されたことを確認した。また1989年に初めて姉川河口付近で発見されたヌマチチブは調査した沿岸のほぼ全域で採集された。
   多数採集された種は、魚類ではヨシノボリ、オオクチバス、ゼゼラ、ブルーギル、ビワヒガイ、オイカワ、ヌマチチブ、フナ類稚魚、ウキゴリ、甲殻類ではスジエビ、テナガエビ、アメリカザリガニであった。これら魚類等のうち、オオクチバスの採集尾数が多いとヨシノボリの採集尾数が有意に少なかった。また、オオクチバスとスジエビの採集尾数との間にも、ほぼ同様の関係が認められた。一方、ブルーギルの採集尾数とヨシノボリの採集尾数との間には明確な関係がみられなかったが、スジエビの採集尾数との間には強い正の相関がみられた。
   琵琶湖沿岸帯における魚類等の採集種類数および尾数の季節変化から、多くの魚類等が夏期には水深2m未満の沿岸帯に生息し、冬期に近づくに従い次第にその生息場を沿岸から沖合に移していく傾向がみられた。しかしながら、テナガエビは周年ヨシ群落内で採集された。また南湖のヨシ群落内では冬期でも比較的多種多様の魚類等が採集された。
   沿岸帯で採集された魚類等の中には、オイカワ、タナゴ類、フナ類稚魚、テナガエビなど多くの魚類等にとってヨシ群落あるいはその前面の水域が重要な生息場となっており、種によっては、また南湖ではヨシ群落を多種類の魚類等が周年利用していることから、琵琶湖沿岸帯の生態系を保全するうえで、これらの水域の周年を通じた保全が重要な課題である。
 
4) 琵琶湖沖合における生息状況
   琵琶湖沖合における魚類等採集結果を表10に示した。
   琵琶湖の沖合は沖曳網漁船を傭船し、水深20m地点で低層曳きにより魚類等を採取した。また長浜市沖では秋期に水深20mから50mまで10mごとに水深別に調査した。その結果、魚類21種(ワカサギ、アユ、ビワマス、ハス、ウグイ、ホンモロコ、ビワヒガイ、カマツカ、ゼゼラ、スゴモロコ、デメモロコ、ニゴイ、ニゴロブナ、ゲンゴロウブナ、オオクチバス、ブルーギル、ヨシノボリ、ヌマチチブ、イサザ、ウキゴリ、ウツセミカジカ)および甲殻類2種(テナガエビ、スジエビ)が採集された。
   今回の調査で、ワカサギ、ブルーギル、ヌマチチブといった従来琵琶湖に生息していなかった魚類が琵琶湖沖でも採捕されることを確認した。ただし、ブルーギルとヌマチチブは今回の調査では長浜市沖20mで採捕されたのみで沖合は主たる生息場所ではないと思われる。ワカサギは夏期(8月中旬)と秋期(11月中旬)の調査で、長浜市沖、彦根市沖、安曇川町沖の水深20m〜30m地点で採集されており、アユと生息域の重なる時期があることより、アユ資源への影響が懸念された。
   ワカサギについては本調査をきっかけに成長、成熟、胃内容物(食性)、産卵場、稚魚の分布等の調査を行った。その結果1995年3月に琵琶湖に注ぐ3河川の河口部でワカサギの産着卵が確認され、また1995年6月には稚魚の全湖的な沿岸での分布が確認されたことにより琵琶湖での再生産が証明された。ワカサギが琵琶湖のアユと同様に動物プランクトンを捕食すること、秋には胃内容物を調査したワカサギ52尾中24尾がアユ幼魚(ヒウオ)を各1尾程度づつ捕食していたことより、ワカサギの増加しだいではアユへの影響が大きい。沖合調査で採捕個体数が少なくまた採捕地点が限られていたものは、スゴモロコ、ゲンゴロウブナ、イサザであった。これらは琵琶湖の固有種でもあり漁業対象魚種として重要である。
 
5) その他
   補足事項として、本調査期間中に漁業者より採捕通報があり当場で確認した新たな魚類はガーパイクの一種1尾(本調査の内湖でも1尾採捕)、クラウンナイフフィッシュ1尾、クルメサヨリ9尾、コクチバス1尾で、いずれも琵琶湖沿岸で漁業操業時に捕獲された。これらは採捕尾数が少なく、また稚魚も採集されていないので、いまのところ琵琶湖で繁殖しているとは考えられないが、熱帯魚であるクラウンナイフフィッシュを除き琵琶湖や県下の河川において生息可能であり、成熟した雌雄が出会う機会があれば繁殖する可能性があるため、今後も動向の把握が必要である。家庭で飼育しきれなくなった観賞魚の自然界への放流や遊魚目的の不法放流は決して許されないことを広く訴える必要がある。
 
4. 要約
(1)1994年4月から1996年3月にかけて、琵琶湖、河川、内湖等、県下水域に生息しているといわれている魚類70種、甲殻類(エビ類・カニ類のみ)7種について、現時点での生息状況を調査した。
(2)今回の調査で、生息の確認できなかった魚類・甲殻類は、アオウオ・カワヒガイ・ニッポンバラタナゴ・アユモドキの4種類であった。また、生息数が少ないと考えられる魚類・甲殻類は32種類、琵琶湖および県下の河川等に普通に見られる魚類・甲殻類は41種類であった。
(3)河川における調査では魚類52種、甲殻類5種が採集され、このほかハリヨは醒井養鱒場の調査で生息を確認した。調査河川の中で最も採集種類数の多かったのは野洲川であり、魚類40種、甲殻類5種が採集された。
(4)内湖の調査では魚類29種および甲殻類3種が採集された。採集種類数の多かったのは西の湖であり魚類23種、甲殻類3種、逆に採集種類の少なかったのは柳平湖であり魚類3種、甲殻類2種であった。
(5)琵琶湖沿岸では魚類41種および甲殻類4種が採集された。また漁業者からの聞き取りにより、魚類2種(ソウギョ、ビワコオオナマズ)および甲殻類1種(モクズガに)がエリで漁獲されたことを確認した。沿岸帯で採集された魚類等の中には、オイカワ、タナゴ類、フナ類稚魚、テナガエビなど多くの水生生物にとってヨシ群落あるいはその前面の水域が重要な生息場所となっており、種によっては、また南湖ではヨシ群落を多種類の水生生物が周年利用していた。
(6)琵琶湖沖合では魚類21種および甲殻類2種が採集された。
(7)琵琶湖では例年漁獲されてもわずかであったワカサギが1994年の夏期(7月中旬)にエリで大量に漁獲された。また沖曳網による琵琶湖沖合の調査でも長浜市沖水深30mの地点で1曳網あたり52尾が採集されるなど、急激な増加のきざしが見られた。
(8)1989年に初めて姉川河口付近で発見されたヌマチチブは調査した沿岸のほとんどで採集され、内湖や河川の中流へも分布を広げていた。
(9)本調査期間中に漁業者より採捕通報があり当場で確認した新たな魚類はガーパイクの一種1尾(本調査の内湖でも1尾採捕)、クラウンナイフフィッシュ1尾、クルメサヨリ9尾、コクチバス1尾で、いずれも琵琶湖沿岸で漁業操業時に漁獲された。
(10)本調査報告書は県下の各水域における魚類等の生息の有無を主眼にとりまとめたが、多種多様な水生生物の見られたところの環境や生物間の相互関係、急に琵琶湖で増えだしたワカサギに関する基礎的知見、その他いくらかの水産資源維持あるいは生態系保全に関する課題を提起することができた。今回の調査では量的な生息状況の把握についても努力し、今後の量的変化に対する基礎資料を得ることができた。
 
【文献】
1)滋賀県水産試験場:琵琶湖水産調査報告 第3巻,1915,119pp.
2)滋賀県水産試験場:琵琶湖水位低下対策(水産生物)調査報告書,1953,pp.31-43.
3)琵琶湖国定公園学術調査団:琵琶湖国定公園学術調査報告書,1971,pp.313-330.
4)滋賀県立琵琶湖文化館:湖国びわ湖の魚たち 平成3年3月増補改訂版,1991,189pp.
5)滋賀県立琵琶湖研究所:琵琶湖の低生動物 掘ゥイメン動物、扁形動物、触手動物、環形動物、甲殻類編,1993,pp52-56.
6)中坊徹次編:日本産魚類検索−全種の同定−,東海大学出版会,1993,pp.226.
7)高橋さち子:琵琶湖で採集されたヌマチチブについて,滋賀県立琵琶湖文化館紀要(8),1990,p.7.
8)滋賀県水産試験場:滋賀県水産試験場研究報告 第40号,1989,pp.92.
9)寺島 彰:琵琶湖に生息する侵入魚−特に、ブルーギルについて−,淡水魚 第3巻 第1号,1977,pp38-43.
 
(表6-1 河川における地点別魚類等採集結果)へのリンク
 
(表6-2 河川における地点別魚類等採集結果)へのリンク
 
(表7 内湖における地点別魚類等採集結果)へのリンク
 
(表8-1 琵琶湖沿岸における地点別魚類等採集結果(小型定置網、小型底曳網による))へのリンク
 
(表8-2 琵琶湖沿岸における地点別魚類等採集結果(小型定置網、小型底曳網による))へのリンク
 
(表9 琵琶湖沿岸における地点別魚類等採集結果(エリ漁獲物の標本採集))へのリンク
 
(表10 琵琶湖沖合における地点別魚類等採集結果)へのリンク