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バス・ギル モニタリングプロジェクト(仮題)






サイト管理者による解説




 
< 掲載した文書の原文を確認されたい方に >
 ここに掲載しました文書は、滋賀県水産試験場、滋賀県県民情報室の他に、滋賀県立図書館にも蔵書されています。滋賀県立図書館の蔵書は、一部を除き、全国の公立図書館を経由して取り寄せ、閲覧することができます。滋賀県立図書館のサイトででは、蔵書の検索サービスが利用できます。検索される場合は、各文書の年度を取った文書名で検索して下さい。
 


 
「平成6〜7年度 琵琶湖および河川の魚類等の生息状況調査結果」について
 
 
調査の必要性と困難さ
 
 この文書は、巻頭言の“はじめに”に記載されているように、取り急ぎまとめた現況報告の形になっています。それでも、多くのデータが掲載され、調査の規模と内容がよくわかるものとなっています。この調査は、近年、琵琶湖で行われたもののなかで、最も大規模なものです。しかし、これほどの大規模な調査であっても、量的なものについては、本文中に、“今回の調査では量的な生息状況の把握についても努力し、今後の量的変化に対する基礎資料を得ることができた。”と述べられています。それほどまでに、琵琶湖のように大きく複雑な水域での調査と解析は、困難な仕事であるわけです。
 琵琶湖のような水域では、地元の水産試験場以外に、十分な調査研究を行うことは不可能のように思えます。また、その水産試験場であっても、継続的に大規模な調査を実施することは、とても困難に思えます。外来魚問題では、調査の必要性が訴えられえています。調査は必要です。しかし、その調査を、誰が、どうやって行うか、それを考え、用意することも行わなければなりません。新たな調査の仕組みを提案し、組み立てて行かなければならないのです。
 
 
 “4) オオクチバス、ブルーギルとヨシノボリ、スジエビの生息尾数との関係”について
 
 この文章で述べられていることは、“オオクチバス、ブルーギルとヨシノボリ、スジエビの採捕尾数の増減に関係のある可能性がある”ということです。そして、その原因として、採捕はされなかったけれど存在が予想される、オオクチバス、ブルーギルの親魚と、その捕食による影響を指摘しています。この部分の考察は仮定によるため、強い表現にはなっていません。
 
 
“ある生物と他の生物の生息数との間に関係がある”とは?
 単純化した思考実験で説明してみます
 
 ある水域で、そこに生息する2種類の細菌、A,Bの生息数を調査したとします。調査は複数の地点で行われ、一定期間継続されたとします。
 その調査の結果、細菌Aが多数生息している地点では、細菌Bが少なく、細菌Aが少ない地点では、細菌Bは多数生息している傾向が見られました。この傾向が、複数の地点で見られ、調査期間内に、細菌Aが増加した地点では、細菌Bの減少が見られました。このような時、両者の生息数の増減の間に有意性があると言えます。正確には、数値の解析を行って有意性の強さを求めます。
 次に、細菌Aと細菌Bの生息数が、どのような原因によってこのような結果となったのかを推定します。細菌A,Bの生息数と同時に調査した項目の中に、各地点の酸性度のデータがあります。これを調べて見ると、細菌Aが多数生息している地点では、水域の酸性度が高いことがわかりました。一方、細菌Bが多数生息している地点では、水域の酸性度が低いことがわかりました。そこで仮定してみます。細菌Aは、酸性の環境を好み、酸性度の低い環境では生息できず、一方、細菌Bはその逆ではないか?
 仮定を検証するために、実験してみることにしました。調査地点の環境を再現した水槽で、細菌A,Bを培養します。酸性物質を添加し、ゆっくりと実験環境の酸性度を上げて行きます。その結果、最初は優勢だった細菌Bは、酸性度が強くなるにつれて減少し、変わって細菌Aが増加しました。実験の条件を幾通りも変えて行ったところ、概ね、仮定した傾向が確かめられました。
 以上の思考実験は、あくまで単純化した架空のものです。実際の自然環境は複雑で、調査も、解析もこのように簡単にはいきません。この思考実験で感じてもらいたいことは、ある生物と、他の生物の生息数の増減との間に有意性がみとめられる、と結論することは、それなりの過程を経て導き出されたものだと言うことです。批判するためには、使用されたデータと解析方法を、しっかりと検証する必要があります。
 
 
“資料編 地点別調査結果”について
 
 このデータは、あくまで調査が行われた時点での、それぞれの地点におけるデータです。しかし、メディアで報道されている情報とは、かなり異なります。特に、エリでの標本採集のデータは、外来魚で溢れかえる網の映像とは、かけはなれた印象があります。メディアの報道姿勢には、疑問を感じざるを得ません。
 


 
「平成12〜8年度 滋賀県水産試験場事業報告」について
 
 
滋賀県水産試験場事業報告とは
 
 滋賀県水産試験場事業報告とは、各年度において、どんな費用(予算)のもとで、どのような事業(調査研究)を実施したかを報告するものです。
 各年度の、“主要事業一覧表”を読んでみると、オオクチバスに関する項目が見当たりません。疑問を感じて、この件について、水産試験場に問い合わせてみました。
  5月1日の滋賀県水産試験場との会話(電話)要約
「平成8年度から12年度までの、事業報告の主要事業一覧には、オオクチバスについての調査研究が記載されていません。他の研究機関で行われているのでしょうか?」
水試 「オオクチバスについては、昭和59年から60年に、プロジェクトとして研究されました。文書は、県民情報室になければ、水産課にあると思います。水産試験場にもあります」
「現在は、主要事業としての調査研究は実施されていないのですか?」
水試 「駆除などの効果により減少(脅威が?)しました。近年(の調査研究の主軸)は、ブルーギルに移っています」
 平成8年から12年度の報告書の主要事業一覧には、オオクチバスについての調査研究の記載はありません。これは、上記の会話(電話)要約からもわかるように、現在の外来魚対策の主軸が、オオクチバスからブルーギルに移っていることを示しています。事業報告書の「イサザ等特産種資源対策費」の項目に、平成11年からブルーギルが現れます。ワカサギも、特産種に対する影響が考えられるとして、平成8年(それ以前は未確認です)には、すでにこの項目に現れています。なお、ワカサギについては、資源としての調査研究も実施されています。単純に、害だけで魚種の重要性を判断しているわけではないのです。ブルーギルについては、独立した費用が割り当てられた調査研究もあります。それだけ脅威を重要視しているわけです。
 ここで、疑問に思うことがあります。滋賀県水産試験場の予算の内容を議論し、承認するところは滋賀県議会です。そして、リリース禁止を含む条例を承認したところも、滋賀県議会です。一方では、オオクチバスの脅威を重要視しない予算を承認し、他方では、オオクチバスのリリース禁止という私権の制限を伴う条例を承認する。滋賀県議会の姿勢は矛盾しています。
 最近、滋賀県水産試験場が、オオクチバスを含む外来魚対策を研究しているという報道を幾つか目にしました。水産試験場には、十分な、人、物、時間、そしてお金の手当てはできているのでしょうか?現場の方々にしわ寄せが行くようであれば、それは、わたしの意図したところではありません。滋賀県行政担当者の、建設的な対応を希望します。
 


 
<< おわりに >>
 
 外来魚問題の議論において、まず俎上に上ることは、ブラックバスとバス釣りに対する批判です。ブラックバスが、その生息環境に与える影響の大小についての議論を、ネットでもよく目にします。ブラックバスは、生物である以上、周囲に影響を与えることは必然です。そして、その影響の大小は一定ではありません。常に、その生息環境とともに変化します。
 今回掲載した滋賀県水産試験場事業報告には、ブルーギルの食性の変化についての記載があります。1977年当時、ブルーギルはエビ類を主に捕食していました。しかし、最近の調査では、ミジンコ類が大きな割合を占めています。この例からも分かる通り、生物の性質は一定ではないのです。今、仮に、オオクチバスが周囲に与える影響の大きさ、あるいは小ささを証明したとして、それは、その証明がなされた時点でしか意味はありません。調査研究は、継続されなければならないのです。
 しかし、現状はどうでしょう。現場で最も大規模な調査を行い得る調査研究機関には予算がつかず、私権の制限を伴う条例が制定され、本来なら協力しあわなければならない方々の間に争いが起こっています。
 釣り人が提供できる釣果データは、漁獲統計と並んで、水産試験場が単独で行う調査によって収集できるデータ量を上回ることが期待できます。しかし、釣果データ、淡水域における漁獲統計とも、直接解析に利用できる形での蓄積は、現在行われていません。
 
 これまで、わたし達は、水辺を巡る問題に、どのように対応してきたでしょうか。
 わたし達は、今、何をすべきでしょうか。
 


by x794_maesure 2003/06/15