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「電気自動車の普及は原動機付き四輪の規制緩和から」
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「電気自動車の普及は原動機付き四輪の規制緩和から」
〜新しい原動機付き四輪の姿を考えてみませんか〜


1.バッテリー式電気自動車が抱える原理的な欠点

 ガソリンエンジンなどの内燃機関を動力とする自動車と、バッテリーを搭載しモーターを動力とする電気自動車の間には、原理的な壁が存在します。どちらも、化学反応によって発生したエネルギーを、最終的に車の運動エネルギーに変えるという仕組みは同じです。しかそ、その化学反応に必要な物質をどこから得るのか、そして、その化学反応によって発生した物質をどうするのか、この2点が、両者では全く異なるのです。

 内燃機関を動力とする自動車は、化学反応に必要な物資の一方、酸素を空気中から得ます。そして、化学反応によって発生した物質、二酸化炭素や水蒸気などは、車外に排出します。ですから、内燃機関を動力とする自動車は、化学反応に必要な物資のもう一方、燃料だけを搭載しています。このような特性は、燃料電池を電源とする電気自動車でも同じです。

 他方、バッテリーを搭載しモーターを動力とする電気自動車では、化学反応に必要な物資を全て搭載しています。しかも、化学反応によって発生した物質は車外に排出されません。空気中の酸素を利用するようなバッテリーは、充電時に高濃度の酸素を発生させることになるので危険です。たとえ高い効率を実現できたとしても、広く実用させることには向いていません。

 燃料電池車を含む、ガソリンエンジンなどの内燃機関を動力とする自動車と、バッテリーを搭載しモーターを動力とする電気自動車、このどちらについても、理想的な形で、化学反応によって発生するエネルギーを、車の運動エネルギーに変換できるとしたら、同じ出力の車で比べると、バッテリーを搭載しモーターを動力とする電気自動車の方が、必ず、しかもかなり重くなります。この欠点は原理的なものなので、逆転させる方法はありません。

 長距離を、多くの貨物や人員を載せて走行する自動車には、ここまで述べてきたような理由から、バッテリー式の電気自動車は向きません。このようなタイプの自動車を、電気自動車にするには、外部電源を利用する方式にするしかないでしょう。

 燃料電池を電源として利用するならば、水素を燃料とするタイプは水素が扱いにくいですし、アルコールなどから水素を得るタイプでは、発電に利用できない物質まで搭載することになります。また、炭素も利用できるようなタイプだと、結局、二酸化炭素を排出してしまいます。他に、キャパシター(高性能のコンデンサー)を電源とするタイプも考えられますが、この方式は長時間、大電力を供給できません。

 内燃機関を動力とする自動車であっても、エンジンで発電機を動かして発電し、その電力でモーターを動かすようなタイプであれば、エンジンを最も効率のいい回転数で動かすとことと、それに加えて余剰電力を蓄電し、それをまた走行に利用することで、燃費の向上が可能な場合もあります。このような方式に近い、ガス・エレクトリックや、ディーゼル・エレクトリックは、鉄道や船舶ですでに実用化され、実績があります。長距離の走行や、多くの貨物や人員を載せて走行する自動車を、電気自動車とするならば、このようなハイブリッド方式が現実的かもしれません。

 ハイブリッド方式で、化石燃料の消費を抑えるためには、燃料をバイオエタノールなどの再生可能な燃料とし、それを安定的に利用するために、自動車の利用台数そのものを抑えることが必要です。船舶や鉄道の利用を増やして、そうしてゆく必要があります。

 普通乗用車を電気自動車とするにも、やはり同じことが言えるでしょう。しかし、その中でも、短い距離を、少ない貨物や人員を載せて走行するようなものならば、その車を思い切って小型化することで、バッテリー式の電気自動車に置き換えてゆける可能性があります。その可能性をもっている車種こそ、原動機付き四輪です。


2.小型電気自動車の普及を妨げる4つの要因

 原動機付き四輪タイプの電気自動車は、国内でも市販されています。しかし、既存の乗用車を置き換えるほどに普及していませんし、今のままでは、将来も同じ状況でしょう。それはなぜなのか、考えられる理由を4つ上げてみます。

A.動力の大きさが制限されている
 原動機付き四輪は、原動機付き二輪と同じ程度の動力しか搭載できません。一人しか乗れませんし、貨物もあまり積載できません。高速道路も走行できません。他方、それらのおかげで安全基準やそれに関する規制が緩やかです。


B.交通状況
 普通乗用車や大型車のひしめく幹線道路や都心部では、通行の邪魔になったり事故の原因となる可能性があります。


C.航続距離が短い
 バッテリーを大量に搭載できないために数キロ〜数十キロ程度しか走れません。


D.心理的な壁
 原動機付き四輪そのものが、マニアが趣味で楽しむ程度のものとの印象があります。


 原動機付き四輪の動力を大きくして、2,3人程度を載せて走行できるようにすると、それは普通乗用車の扱いになります。そうなると、厳しい安全基準やそれに関する規制が適用されます。それを満たそうとすると、車体が重くなります。実際に、このようなことが障害となって、海外では普及の始まっている小型の電気自動車も、日本では走れないのです。

 結局、ここがネックなのです。動力が小さく制限されているがゆえに、一人しか乗れず、貨物もあまり積載できず、マニアが趣味で楽しむ程度にしか普及しないのです。ですから、この制限を緩和し、定員も3人程度まで認めれば、AとDについては解決できます。乗用車の都心部への流入制限を設ければ、少なくとも都心部についてはBも解決できます。

 あとはCですが、充電スタンドの普及を待っているだけでは、長い時間がかかります。ですから、ここはもっと思い切って、100CC程度のエンジンを搭載したガス・エレクトリック方式を開発するのです。そうすると、もちろん純粋な電気自動車ではなくなります。いえ、むしろ、純粋な電気自動車であることを積極的に放棄するのです。そして、高価で高性能なバッテリーやモーターを搭載するのではなく、100CC程度のエンジンと、発電機、安価な鉛蓄電池、モーターを搭載し、純粋な電気自動車としての航続距離は数キロ程度でも、車としての航続距離が数十キロ、価格も現在の軽自動車程度に抑えることが、もし、できたなら。

 100CC程度のエンジンを搭載したガス・エレクトリック方式で、定員は3人、航続距離は数十キロ、価格は現在の軽自動車程度、扱いは原動機付き四輪。合わせて、乗用車の都心部への流入制限の実施。これだけの条件が揃ったならば、パーソナル・ユースの街乗りや、都心部の営業車、さらには農村部の軽トラックを、この新しい原動機付き四輪で置き換えることができるのではないのでしょうか?


3.電気自動車の普及は原動機付き四輪の規制緩和から

 技術は魔法ではありません。これから出現するであろう技術の完成形だけ目指すのではく、そこに至る道のりを洞察し、過程に現れる技術と、それに必要な社会制度を整え、それらを常にアップデートして行く。そうして初めて、革新的な技術を手に入れることができるのです。

 一足飛びに電気自動車の普及を考えるのではく、まず、小型電気自動車の普及を目指す。そのために必要な規制の緩和や、社会制度を整備する。その、最初の一歩に、新しい原動機付き四輪の姿を考えてみませんか。




2009年11月08日 辻井 豊
2009年11月09日 01:30 文章一部整形 辻井 豊


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