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「わたし達の努力は足りているか?」
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「わたし達の努力は足りているか?」
〜環境施策の実現だけが環境保全ではない〜


1.はじめに マニフェストの環境項目だけが環境の為にあるわけではない

 いよいよ衆議院議員選挙の日程が明らかになりました。各党とも選挙の公示日前後にはマニフェストを公表することでしょう。その公表されたマニフェストには、環境保全に関わる項目もあるでしょうが、それそのものが争点になることはないでしょう。最近は地球温暖化対策が注目されてはいますが、選挙の争点とはならないでしょう。
 では、選挙の争点と環境保全とは、全く関係ないのでしょうか。いいえ、そんなことはありません。人間の活動は、ありとあらゆるものが自然環境に影響を与えます。それららの関わりを理解し、各政党が掲げるマニフェストと、その実現可能性を洞察し、投票することが、今、わたし達に求められているのです。


2.円安かそれとも新興国の通貨上げか

 地球温暖化対策を見るまでも無く、経済政策は環境保全に大きな影響力を持っています。例えば為替相場。我が国の農産物は、安い輸入農産物に押されて売れなくなりました。バブル初期には、1ドル200円程度でしたが、今やその倍です。これでは輸入農産物に価格競争で勝てるわけもありません。その上、アメリカやEUのように、構造平野で大規模に生産される農産物にはとても太刀打ちできません。それらのことが原因の一つとなって、耕作放棄地の拡大や里山環境の荒廃が起きています。
 では、円を安くすればよいのでしょうか。日銀がお札を刷って、資産や国債を買い上げれば円は安くなります。ただこの場合、金利も上昇しますから、借入金で自転車操業している中小企業には大打撃です。そこをきちんと手当てするならば、円安誘導は効果的な方法です。国債を発行して、農林漁業経営体に所得保証を行い、その国債を日銀が買い上げる。あるいは政府紙幣を発行して、農林漁業経営体に所得保証し、その政府紙幣を日銀が買い上げる。そのような施策が、円安誘導と我が国の農林漁業の維持に役立ちます。そしてそれが、里山環境の保全にもつながるのです。もちろん、円安は我が国一国だけで実現できるものではありません。実現するためには、外交を通じて、他国とも交渉と続けて行かなければなりません。
 円安と同じ効果を生むやり方で、もう一つの別のやり方もあります。それは、他国、特に新興国の通貨を上げることです。例えば、アメリカやEUは、中国を工場としてはではなく、市場としてみています。中国の通貨である元が変動相場制になったり、切り上げされたりすれば、巨大な市場が誕生します。しかし、中国は沿海部こそ経済発展を続けていますが、内陸部はまだまだ遅れています。民族問題もあって政情も不安定です。このような状態で、元の変動走相場制への移行や、大幅な切り上げを行えば、貧富の格差が拡大し、国家としての安定さえ失う可能性もあります。ですから、元の切り上げを実現するためには、中国内陸部の経済発展と、政情の安定化を実現する必要があります。経済的な方策としては、元の切り上げを見越した上での工場の進出、投資。外交的な方策としては、粘り強い民主化要求です。どちらも、アメリカとEUは実行しています。それが、中国に巨大な市場を生み、自国の利益となるからです。


3.安いのに売れない国産サケ

 わたし達は、値段の安い高いだけで商品を選ぶわけではありません。その値段以外の要素となるものに、好き嫌いがあります。しかも、好き嫌いはいつも同じではありません。例えば、輸入サケは国産サケよりも高いにも関わらず、市場の多くを占めるようになりました。その煽りでサケ・マスの孵化事業は窮地に立たされています。消費者の味覚が脂濃いものを美味しいと感じるように変化したため、脂濃い輸入サケが売れるようになったのです。このような味覚の変化には、メディアの影響も相当あるかもしれません。もっとも、サケ・マスの孵化事業そのもが、環境保全にプラスなのか、マイナスなのかという問題もあります。ですから、このことがただちに環境保全にマイナスであると言う話しではありません。ただ、わたし達の好き嫌いの変化が、魚の放流や河川整備にまで影響を与えてしまう、そんな現象が、今、現実に起きているのです。


4.足りない専門家の努力

 昨年には徳島県の旧吉野川でウオーターレタスが大繁殖して、その様子が報道されました。大阪府の淀川でも、オーターレタスの大繁殖は毎年見られる現象となっています。この旧吉野川、淀川は、どちらも河口に堰がある河川です。湖沼を除くそれらの河川以外では、ウオーターレタスの大繁殖は伝えられていません。このことから、河口堰の存在がウオーターレタスの大繁殖に大きく影響していることは明らかです。ですが、報道の中に登場する専門家は、一言もそんなことを口にしません。行政の研究機関だから立場上言えないのだとするならば、そこに突っ込まないメディアや、メディアをけしかけない他の大勢の専門家は、ご自分の責任を果たしているとは言えません。
 一部の地方自治体や調査研究機関の中には、農林水産省関連の予算や環境省関連の予算ではなく、国土交通省の予算で環境保全施策を行うところも出てきました。また、環境コンサルティングの資格の中には国土交通省が認可する資格があります。環境省の仕事は、いったいどこにいってしまったのでしょうか。長良川河口堰の問題で旧建設省にねじ伏せられて以来、環境省も、そこに連なる専門家の方々も、事なかれ主義に染まってしまったのでしょうか。


5.おわりに 外来種問題

 環境保全施策そのものは、人間の活動としてはごく一部に過ぎません。人間の活動の中では、経済活動こそが圧倒的で、自然の姿を大きく変えてゆきます。にも関わらず、近頃の環境保全に関心のある方々は、環境保全施策にはご熱心でも、経済施策については全く熱心ではありません。特に、外来種問題ではその傾向が顕著です。
 かっての内閣府の調査では、国民の9割が外来種対策に賛成であると言う結果が出ました。しかし、その9割が、1960年代のレベル、今の倍も米飯を食べれば、里山環境を改善する大きな力となります。里山環境の喪失は、外来種の増加に拍車をかける大きな原因の一つですから、これは極めて有効な外来種対策です。それを、一体どれほど人たちが理解しているのでしょうか。どれほどの専門家が、理解せよと呼びかけているのでしょうか。
 大阪府下で、エスカルゴになる外来のカタツムリが大繁殖して問題になっています。カエルやヘビや、マイマイカムリがたくさんすんでいる環境なら、カタツムリそのものがあそこまで大繁殖することはなかったでしょう。駆除はやむを得ません。しかし、なぜ増えたのかと言えば、コンクリートやアスファルトで舗装された都市環境になった結果であろうと、報道では伝えるべきでした。外来種を飼育し、外部の環境に遺棄する人たちは、ずっと以前からいましたし、これからも後をたたないでしょう。皆無にすることは、もはや不可能です。だからこそ、なぜそこにいるのか、その理由以上に、なぜそこで増えるのかを伝えることが大切なのです。




2009年07月14日 辻井 豊
2009年07月14日 23:00 文章整形 辻井 豊


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