×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

「環境会計は誰のため?」
目次へ戻る


「環境会計は誰のため?」
〜環境会計が孕む危険性〜


1.設備投資は投入した資金を緩やかに費用に変えてゆく

 近頃企業が熱心に取り組んでいる環境会計。これは、企業が環境対策に資金を投下したとき、どんなことに、どのように投下すれば、どんな損失がどれくらいあるのか、それを管理会計の上で把握し、効率のよい環境対策を行なおうというものです。

 基本的に、環境対策への資金の投入は損失となります。しかし、環境対策を行なった結果、光熱費の節約であるとか、他の費用の削減に役立ったのなら、それを把握することが企業経営に役立ちます。これはよく言われることなのですが、言うほどに簡単なことではありません。

 例えば、環境対策への資金の投下が設備投資の形で行なわれるなら、その設備が生み出す利益(他の費用の削減)と、減価償却によって設備が失って行く価値を秤にかける必要があります。固定資産(パソコンやソフトウェアも固定資産です)には会計上の耐用年数と、耐用年数が経過した結果残る価値(残存価額)が決められています。固定資産は年月の経過にともなって資産価値を失ってゆくのです。設備は、古くなれば性能が落ちたり、故障しがちになったりします。その状態を会計上で把握しょうとするものが減価償却の考えです。失われて行く価値は、費用として逐次計上されます。環境対策に設備投資すれば、それ自体が必ず費用を生むのです。もっとも、設備投資と減価償却には税金対策の効用もあります。


2.コストパフォーマンスではなくコストの総量こそが実体

 先に話した機能は、環境会計の内部機能と言われます。これとは別に環境会計には外部機能があります。

 例えば、環境対策への取り組み、環境会計の内容を一般に公開することで、どの企業の取り組んでいる環境対策が、どれくらいの効果(経費削減)を上げているのか、外部から評価できるようにします。そうすることで、効果的な環境対策を行なっている企業の信用が上がるなどの、宣伝効果が生まれます。また、このように外部からの評価を取り入れることで、効果的な環境対策を行なっている企業が生き残ったり、より効果的な環境対策への取り組みを促したりすることができます。

 しかし、企業内部の費用が節約できたり、企業の信用が上がったりした、その結果、生まれる状況とはどんなものでしょうか。例えば、その企業の製品が売れるようになります。そうなると、環境対策に取り組んだ結果、製品単位でのコストが下がっていても、たくさん生産して売れば売れるほど費用の総和も大きくなりますから、コストの総和が結局以前と変わらないか、大きくなることもあります。

 他にも環境関係の設備を設計したり、設置、運用したりする会社が生まれたり、売上が上がったりします。それらの会社でも、企業活動によって費用が発生しています。売上が増えれば、費用の発生も増えます。製品を買う消費者や、捨てられた製品を回収したり処分したりするために必要な費用も増えます。

 企業内部で費用が減ったり、コストパフォーマンスが改善されても、社会全体で発生する費用が増える。環境会計は、結果的に環境保全にマイナスとなる危険性を孕んでいます。


3.エントロピーを間違って解釈してはいけません〜境界線をどこに引くか

エントロピー 例1 エントロピー 例2
エントロピー 例3

 環境保全の話題で、エントロピーが引き合いに出される場合があります。

 エントロピーとは、熱力学に登場する概念です。熱力学の第2法則は、エントロピー増大の法則と呼ばれ、熱力学的な運動の不可逆性を表しています。閉じた系(宇宙、あるいは外部とのエネルギーのやり取りを完全に遮断した箱の中)では、常にエントロピーは増大します。決して減少することはありません。そして、その系はやがて、熱力学的な平衡状態に達します。そうなると、その系の中では熱力学的に何も起こらなくなります。この状態をよく、熱力学的な死と言ったりします。

 エントロピーの概念は、まだまだ一般には理解されていません。それで、よく間違った使い方をされることがあります。エントロピーは、よく汚れに例えられますが。それはあまり正しくありません。

 エントロピーとは、系がどれだけ一様かを表す量です。ある世界が、どれだけ、どこもかしこも同じ状態なのかを示します。どこもかしこも同じ状態なほどエントロピーは大きくなります。自然界全体では、時間とともに、どこもかしこも同じ状態になってゆきます。

 生命現象は部分的にエントロピーを減少させていると言われることがあります。生命の誕生、進化....しかし、その生命の誕生と進化は、外部エネルギー源である太陽からのエネルギーあっての現象です。その太陽内部では、外部にエネルギーを放出することで、エントロピーは増大してゆきます。太陽も含めた系全体では、やはり、エントロピーは増大してゆくのです。

 境界線をどこに引くか、その問題なのです。エントロピーも。環境会計も。企業内部でいくら環境保全に取り組んでいても、評価の境界線が企業とその外部との間に引かれている限り、それは環境保全ではないのです。環境会計には、そこを誤らせる危険性があるのです。




2007年10月12日 辻井 豊


目次へ戻る