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「2,000トンの藻の行方」
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「2,000トンの藻の行方」
〜三面護岸と広域下水道の普及は内湾や湖沼を富栄養化させる?〜


 本日(2007年08月26日)、自宅から徒歩1分の山田川の姿を、橋の上から撮影しました。撮影時刻は正午頃です。ありふれた都市河川の姿です。30年ほど前に三面コンクリート張りになりました。その後に続いた広域下水道の普及によって水量も減少しています。三面護岸になるまで、この川にはたくさんの魚がいました。ここと、近所の溜め池で、よく釣りをしました。網を持って魚採りもしました。お世辞にも綺麗とは言えない川でしたが、とても面白い遊び場でした。三面護岸になって魚の姿は消えたわけですが、溜め池、雑木林、田圃、空き地も同じ時期から姿を消して行き、それに伴って虫がとても減りました。子供の頃は、夏になると蚊取り線香が必須でした。現在は年に5,6日しか香取器を使いません。数年前には、増水対策として堤防のかさ上げ工事が行なわれました。それまでは、簡単に河床に下りることができました。

 数日前まで、山田川は一面藻に覆われていました。藻の正体は糸状藻類のようでした。アオミドロがその代表です。それが、川面の8割以上を覆っていたのです。そんな状態が家の近所だけでなく、上流にも、下流にも広がっていました。その一面に川を覆い尽くしていた藻が、数日前に降った雨によってほとんど流されてしまいました。これは別に珍しいことではなく、三面護岸になり、広域下水道の普及で水量が減ってから、夏になると普通に見られます。そんな見慣れた光景なのですが、今回は、一つの疑問が浮かんだのです。

「流された大量の藻はどこに行くのか?」

 山田川は、自宅付近から、さらに2kmほど流れて安威川に合流します。安威川はその後、神崎川に合流します。神崎川は、さらにいくつかの合流と分流を繰り返し、大阪湾へと注ぎます。大雨で長された藻はどこへ行くのでしょうか?どれくらいの量の藻が、流されて行くのでしょうか?

 ここで、計算を簡単にするために、川幅5m、水深20cm、流れの方向に1m、この1立方メートルを覆い尽くすように繁茂している藻の重量を1kgとします(*1)。この状態の繁茂が、山田川全域のうち、5kmほどにわたって見られるとします。そして、同じ様な状態の河川が、大阪湾には100本流入しているとし、それぞれの河川で1年間に4回、繁茂と大雨による流出をくり返すと仮定します。このとき、流出した藻が全て大阪湾に到達するとすれば、大阪湾に1年間に流れ込む藻の量は以下のように計算されます。

 1(kg/m) × 5,000(m) × 100 × 4 = 2,000(t)

 上記の計算のように、先述の仮定では、1年間に2,000トンの藻が大阪湾へと流れ込むことになります。10トン積みの大型トラックなら200台分です。

 今は普通の光景となった藻の繁茂と流出ですが、三面護岸となり、さらに広域下水道の普及によって水量が減るまでは見られませんでした。三面護岸化後、山田川が特に富栄養化したわけでもありません。ですから、今、川面を埋め尽くす程に藻を繁殖させている栄養分は、以前も山田川に流れていたことになります。広域下水道の普及する以前に総量的に計測すれば、川を流れる栄養分の量は、今よりも多かったかも知れません。ただ、藻の姿をしていなかっただけで。

 でも、3面護岸になる以前と今とでは、川を移動する栄養分、すなわち有機物の様子に大きな違いがあります。それは、川に棲む生き物の存在です。藻は、大雨が降って増水すれば、下流へ流されて行くだけです。しかし、エビやザリガニ、魚は強い流れから避難することができます。流れを遡ることさえできます。貝類なら簡単には流されません。川にたくさんの動物達が棲んでいれば、川を流れる栄養分の一部は、川と、その周辺を循環します。しかし、藻や微生物ぐらいしか棲まなくなった川では、栄養分は下流への一方通行となってしまいます。

 三面護岸化された水路が巡り、広域下水道の普及した都市部では、そこに面する内湾や湖沼の水質改善は難しくなってきているようです。もちろん、高度成長期よりは綺麗になっているようです。山林や、農地からの栄養分の流下もあるでしょう。でも、水質改善が進まない原因の一つに、こんな藻の繁茂と流出があるのだとすれば?

 三面護岸と広域下水道は都市生活に欠かせません。何か対策はあるのでしょうか?

 山田川では、年に一度、護岸の雑草刈りが行なわれます。河床を階段状にしたり、蛇行させて通常状態での流れを早くすることには大変な工費がかかります。雑草刈りなどの護岸の維持作業も難しくなります。雑草刈りを行なわないと、護岸が崩れたりして危険な状態になるかも知れません。虫が増えたり、景観が悪くなったり、そんな理由で苦情も出るかもしれません。簡単に元に戻すわけにはいかないのです。


(*1.もちろん完全に乾燥させると、もっと軽くなでしょう。また、そのままだと大量の水を含んでいるので、とても重いでしょう。雑巾を絞る程度に脱水した状態を想定しています。ちなみに、水、1立方メートルの重さは1トンです)


自宅から徒歩1分の山田川
上流方向 消防取水升 下流方向
(画像をクリックするとその画像が拡大されます。拡大画像表示後、この画面に戻る場合はブラウザの戻るボタンを使ってください)
 自宅から徒歩1分の山田川の様子です。撮影日時は2007年08月26日の正午ごろです。左は上流側の写真です。流れが二本に分かれています。向かって左側の流れは南千里の方向へ、右側の流れは万博公園のある丘陵地の麓を巡って北千里へと続きます。中央の写真は、橋の下に作られた消防取水升です。この付近は、三面護岸化される以前から、蛇籠や石組みを使って水深を確保してありました。左の写真は下流側です。府道、JRをくぐり、安威川へと注ぎます。数日前までは、山田川の川面を藻が覆い尽くしていました。まるで黄緑の絨毯を敷き詰めたようになっていました。それが大雨による増水でほとんど流されてしまっています。


橋の欄干
上流側 下流側
(画像をクリックするとその画像が拡大されます。拡大画像表示後、この画面に戻る場合はブラウザの戻るボタンを使ってください)
 堤防のかさ上げ工事によって、橋の欄干がコンクリートで塞がれています。白っぽい部分が塞がれた部分です。ここまで水かさが増したことは、まだ一度もありません。でも、ひどい大雨になると、溢れるのではないかと思うぐらいに増水します。欄干を塞いで、どれほど役に立つのか、素人のわたしにはわかりません。




2007年08月26日 辻井 豊


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