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「水産庁による遊漁者への費用負担検討記録」
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「水産庁による遊漁者への費用負担検討記録」
〜ライセンス制は現実的ではない〜

 水産庁では、「沿岸漁場整備開発法」にもとづいて、過去5年間に渡って遊漁者への費用負担を検討してきました。その結果は「第5次栽培漁業基本方針」(平成17年度策定)に反映されています。「栽培漁業基本方針」とは「沿岸漁場開発整備法」に基づくもので、この方針の策定後、各地の自治体(都道府県)はそれぞれに「栽培漁業基本計画」を策定し、実施します。この「栽培漁業基本計画」は5ヵ年計画で、現在実施されている「第5次栽培漁業基本計画」は、その目標の達成を平成21年度においています。

 水産庁では「第5次栽培漁業基本方針」の策定にあたって、遊漁者への費用負担を5つの方法について検討し、その結果、協力金方式によって行なうことと決定しました。検討された5つの方法とは、「第5種共同漁業権の適用」、「ライセンス制の導入」、「管理費用の税としての徴収」、「放流資源の利用に対する税または課徴金の導入」、「負担金及び協力金方式」で、いずれも現場での徴収によるものです。これらの中からどれを選択するかの議論において、ライセンス制は現実的ではないとして選択されませんでした。その詳しい理由については、水産政策審議会の議事録の中に残されています。

 また、ライセンス制については、1994年衆議院議員農林水産委員会(議事録:94-衆-農林水産委員会-11号 昭和56年04月23日)、1998年衆議院農林水産委員会(議事録:98-衆-農林水産委員会-14号 昭和58年05月11日)、1998年参議院農林水産委員会(議事録:98-参-農林水産委員会-12号 昭和58年05月17日)などで議論になったことがあります。いずれも、我が国の自然水域における魚の利用の考え方(無主物であること)や、ライセンス制の導入によって遊漁者に発生する権利について、漁業者側に反発があることなどを理由に否定されてきました。これらの理由は、今、現在も変化していません。

 さらに水産庁は、遊漁者の組織化が遊漁に関わる問題の解決に重要であると考え、遊漁船業者、案内業者を組織化する方法で、それを実現すべく施策を実施し、そのうち遊漁船業者については法制度化され、実現しています。遊漁者への費用負担として選択された協力金も、原則的には遊漁船業者を通じて徴収されます。それ以外の方法での遊漁者の組織化は、把握できないとして検討されていません。


 以下に示します資料は、「沿岸漁場整備開発法」と、それに基づいて行なわれた「第5次栽培漁業基本方針」の策定に関わる議論の中で、遊漁者への費用負担に関わるものです。また、末尾に、現在ライセンス制が実施されている、北海道で、昨年行なわれた会議の中から、ライセンス制に関わる部分の議事録を参考として示します。




「沿岸漁場整備開発法」
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S49/S49HO049.html

***以下一部引用***
(指定)
第十五条  都道府県知事は、第七条の二第三項の規定により基本計画において放流効果実証事業に関し同項に掲げる事項を定めたときは、その管轄に属する水面において水産動物の種苗の放流を行おうとする者で次に掲げる要件を備えるものを、その申請により、当該都道府県に一を限つて、当該都道府県において放流効果実証事業を実施する者として指定(*1)することができる。
(事業報告書等の提出)
第二十一条  指定法人は、毎事業年度経過後三月以内に、放流効果実証事業に係る事業報告書及び収支決算書(放流効果実証事業に協力する者が任意に拠出した金銭(以下「協力金」という。)(*2)を収受したときは、協力金に関する収支の明細を記載した書面を含む。)を作成し、都道府県知事に提出しなければならない。
***以上一部引用***
 *1.指定を受けたものを指定法人といいます
 *2.放流効果実証事業における協力金の支払いは任意です(この法律では協力金について規定されていません)

 放流効果実証事業における協力金を徴収できる団体は、都道府県に一つです。事業計画には知事の認可や、海区漁業調整委員会の意見を聞く義務があります。また、報告義務もあります。協力金の支払いは、任意とされています。また徴収された協力金は、必ずしも放流効果実証事業に使われるわけではありません。




「水産政策審議会 第4回資源管理分科会議事録 」(水産庁 平成13年11月29日(木) 於・東条インペリアルパレス )
http://www.jfa.maff.go.jp/iinkai/suiseisin/gijiroku/kanri/004.html

 上記の議事では、費用徴収の方法について、「第5種共同漁業権の適用」、「ライセンス制の導入」、「管理費用の税としての徴収」、「放流資源の利用に対する税または課徴金の導入」及び「負担金及び協力金方式」の5つの方法について検討されています。いずれも、問題点が指摘されています。問題点としては、広大な水域での徴収が困難である、魚種を特定して徴収することが困難である、徴収制度の維持自体の為に費用負担が高額になる、などが上げられています。ただし、D-J法のような釣具製造業者への課税は検討されていません。あくまで、現場徴収を前提としています。議事から、費用負担についての結論に該当する部分を、以下に引用しておきます。

***以下一部引用***
〜当面は国の支援と漁業者、遊漁者等からの協力金によりまして、都道府県、公益法人等が中心となって事業を継続しながら、現行法で制度化されている放流効果実証事業の機能を十分に活用すべく実効面で強化するなどして、できるだけ早く、広く国民の理解し得る放流効果の実証を行うことが緊要であるということで、そのための具体的な推進方策をまとめてございます〜
***以上一部引用***




水産庁プレスリリースより
「「栽培漁業にかかる費用負担のあり方について〜中間とりまとめ〜」の公表について」(平成14年1月15日)
http://www.jfa.maff.go.jp/release/14.01.15.2.html

***以下一部引用***
〜栽培漁業の費用負担については、天然魚も含めた包括的な資源管理の考え方の下で広範囲な費用負担のあり方を検討する必要があるという観点から、「第5種共同漁業権の適用」、「ライセンス制の導入」、「管理費用の税としての徴収」、「放流資源の利用に対する税または課徴金の導入」及び「負担金及び協力金方式」の5つの方法について検討を行った。検討の結果、「当面は現行の国の支援と漁業者、遊漁者等からの協力金によって都道府県、公益法人等が中心となって事業を継続しながら、広く国民の理解し得る放流効果の実証を行うことが緊要である。」とされた〜
***以上一部引用***

「「栽培漁業のあり方について〜報告書〜」について」(平成16年 9月13日)
http://www.jfa.maff.go.jp/release/16.0914.05.htm

***以下一部引用***
〜栽培漁業の発展経緯と現状について、「栽培漁業の考え方」、「栽培漁業の推進体制と歴史」、「関係法律等の整備」、「種苗生産・放流量と栽培漁業の事例」、「放流における費用負担の現状」及び「他の施策等との関連」として整理した。さらに、栽培漁業の課題について、「技術的課題」、「推進体制」及び「費用負担」に分けて課題を整理した。これらのことを受け、栽培漁業のあり方として、「栽培漁業の位置付け」、「推進体制」、「合意形成システムと計画に基づく合理的な進行管理」及び「費用負担のあり方について」について検討を行った。最後に、これからの栽培漁業に向けての提言を行った〜
***以上一部引用***

 上記に引用したプレスリリースに見られるような「栽培漁業の費用負担については、天然魚も含めた包括的な資源管理の考え方の下で広範囲な費用負担のあり方を検討する必要がある」との観点から、現在、数箇所の自治体において協力金の徴収が実施、あるいは計画されています。これは、平成13年に制定された「水産基本法」の流れを汲むもので、当時より、この項目は議題に上っていました。当時から現在に至るまで、各地で「放流によって増殖の効果が認められる魚種」については、遊漁者に費用の一部を負担させることが実施、検討されています。おりしも、現在、「水産基本計画」の見直しが行なわれています。これは平成19年度より実施されるもので、水産政策全般の広範囲な見直しが予定されています。遊漁者への費用負担が、あくまで「栽培漁業の費用負担」である限り、内水面における第5種漁業権制度のようなものが、「海面」にも持ち込まれるかもしれません。




「水産政策審議会 第8回企画部会議事録」(水産庁 時・平成17年2月23日 於・農林水産省第2特別会議室)
http://www.jfa.maff.go.jp/iinkai/suiseisin/gijiroku/kikaku/008.html

「水産動物の種苗の生産及び放流並びに水産動物の育成に関する基本方針(案)」(農林水産省 2005年01月24日)(PDFファイル)
http://www.maff.go.jp/www/public/cont/20050124pb_1c.pdf

 上記の「水産動物の種苗の生産及び放流並びに水産動物の育成に関する基本方針(案)」は、水産政策審議会第8回企画部会にて了承され、その後、公表、パブリックコメントの募集を経て「第5次栽培漁業基本方針」として公示されました。各地の自治体(都道府県)は、これを受けて「第5次栽培漁業基本計画」を策定し、それが現在の、それぞれの施策に反映されています。「第5次栽培漁業基本方針」は海面だけでなく、内水面にも適用されます。公示された当時は外来魚の扱いに注目が集まり、報道もその面について伝えられました。集まったパブリックコメントも外来魚の扱いに関するもののみでした(1件のみ)。「第5次栽培漁業基本方針」には遊漁者への費用負担の扱いが盛り込まれており、その策定に至る議論の中で5種類の費用負担の方法について議論されました。いずれも現場徴収の方式です。その結果、遊漁者への費用負担は、協力金のやりかたで求めて行くことになりました。




*参考
「北海道地方環境事務所 平成18年度第1回海域ワーキンググループ会合 」(PDFファイル)
http://www.sizenken.biodic.go.jp/park/higashihokkaido/topics/8/05umigiji.pdf

***以下一部引用***
〜ライセンス制も10何年も積み重ねながらも、まだ、すごい問題を抱えながらやっているという経過にあり、 地元の方からも、これが本当に必要なのかという意見がかなり出てきている中で、 外から見ると先進的な事例があって、すばらしいというふうに思われるかもしれませんけれども、 現実面では、そんなに生易しいものではないのです。〜
***以上一部引用***




2007年01月03日 辻井 豊



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