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「外来魚流出防止指針を示せない環境省と魚類学会」
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「外来魚流出防止指針を示せない環境省と魚類学会」
〜流出や流下が重拡散の主流でも周知できない現状〜

 外来生物被害防止法が施行されてからおよそ1年半。外来魚の中でもオオクチバス、コクチバス、ブルーギルは特定外来生物の第一陣として指定されました。その中でも、特にオオクチバスについては、指定後も防除指針、告示、防除推進会議などで重点的に取り扱われています。

 外来生物法の施行によって、オオクチバスの拡散経路として長く注目されてきた無断放流は、厳しく規制されることとなりました。外来生物法以前からも、1992年に出された水産庁通達などによって、無断放流は各地で禁止されてきました。現在、大規模な無断放流が行なわれることは、ほとんどないでしょう。しかしながら、オオクチバスの生息している河川、湖沼の多くは、水系として他の河川、湖沼と接続している場合も多く、水系を伝った拡散が止んだわけではありません。水系を伝った拡散とは、それまで外来魚が生息していなかったところに広がる場合もあるかもしれませんが、すでに生息していたところに、さらに広がる、いわば重拡散とも言えます。

 特定外来生物に指定された外来魚の流出防止については、外来生物法で特別に認められた飼養施設には、それを認める条件として明記されています。しかしながら、それ以外の生息水域には、なんの規制もありません。防除指針などでは、拡散を防ぐために流出に注意すべきと触れられてはいますが、義務はなく、メディアなどを通して注意喚起がなされることもありません。メディアは“放流などで広がった外来魚”と書きたてるだけなのです。

 溜池や水路の埋め立て、堤の改修工事での水抜き、河川でのそれ、水抜きせずとも大雨の増水時などに外来魚は流出します。水系の河口部に堰などがあれば、流出した外来魚はそこに集まり、繁殖します。河口堰の側でいくら駆除したところで、労力と費用が無限にかかるだけです。外来魚の防除は、水系単位に上から下へと計画的に実施されなければ効果を見込めないのです。河口堰のあるような場所で、唯一効果を上げると考えられる方法は、年に何度か堰の全開操作を行い、流速を復活させて下流部に溜まった外来魚を海へと押し流すことくらいでしょう。

 これまでの研究で、外来魚の中でも特にブルーギルは、高温、低酸素状態に強いことがわかってきました。水抜きの際にも、徹底的に干し上げないと駆除しきれないのです。大阪府淡水魚試験場(現在の水生生物センター)が、府下の溜池にブルーギルを放流した際にも取り残しが記録されています。また、干し上げを徹底的に実施したとしても、再び湛水する際に、外来魚の生息する水域から水を引いたのでは元の木阿弥です。

 外来魚の生息する水域は、全国に無数に存在します。それらを水系という枠で見た時、外来魚の防除は、その水系の中で、計画的に実施されなければなりません。しかしながら、ローカルな水系を擁する地域は、財政状況の逼迫した自治体であることもあり、外来生物法の網の中に、これらローカルな水系での流出防止義務を盛り込んだとしたら、大混乱が起きるでしょう。そうです、外来魚の流出防止を、外来生物法の網の中に取り込んで義務化させることはできないのです。

 今後、大量の無断放流が起こり難い以上、外来魚の拡散は、水系を伝った流出こそが主流であると言えます。しかしながら、このことについて、環境省も、魚類学会も、なんの指針も公表してはいないのです。外来生物法の網を被せることができない以上、これらの組織が、外来魚の流出防止について、声明を出し、周知に努めるしかないにもかかわらず。

 メディアで外来魚とセットで使われる言葉、“釣り人による放流”。駆除派と呼ばれる方々は、その集まりの中で、バス釣りの禁止を公言しています。“ブラックバス”という言葉が出たとたん、人々は冷静さを失います。駆除派と呼ばれる人たちも、擁護派と呼ばれる人たちも。

 現状を冷静に見つめた、現実的な判断こそが、今、必要とされているのです。


2006年12月28日 辻井 豊


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