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「淀川大堰を取り上げないメディア」
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「淀川大堰を取り上げないメディア」
〜木村英造氏とのやり取りから〜


1.淀川、城北わんどをめぐる報道

 本年(平成18年)には、淀川の環境や、淀川の城北わんどめぐる報道が多々ありました。きっかけは、本年の城北わんどにおける調査で、天然記念物であるイタセンパラ稚魚の浮上を確認できなかったことにあるようです。この調査の結果を受けて、国土交通省淀川河川事務所では、城北わんどの一つを干し上げ、ゴミや、外来魚、外来植物を取り除いて環境変化を見る実験を計画しました。この干し上げ実験は実行され、本年の11月23日には、引き上げたゴミや、わんどから取り上げた生き物の観察会が実施されました。この観察会の報道や、近年淀川で繁殖しているウォーターレタスなどの報道などが、新聞や関西ローカルのテレビニュースでありました。それらの報道の中から、わたしが確認できたもののうち、淀川の様相を大きく変えてしまった淀川大堰について取り上げたものは、毎日新聞の報道のみでした。読売新聞も、木村英造氏の発言を引用するかたちで、淀川大堰の名前を出してはいたのですが、「大堰による環境悪化は明白だったのに、国の対策は後手後手に回った」とする木村氏の発言を否定しているかのような内容を掲載していました。木村英造氏は、財団法人淡水魚保護協会(すでに解散)を創設され、淡水魚の保護に尽力されてきた方です。イタセンパラの天然記念物指定も、木村氏らの尽力によるものです。


2.淀川の環境と淀川大堰

 淀川は、大堰の稼動によって、大堰から上流の枚方に至るまでがダム湖同様の環境となってしまいました。水位の変動は抑制され、河川敷を水浸しにするような増水や、わんどを干上がらせてしまうような減水は、起こりにくくなりました。本来ならば、このような水位変動が、淀川の環境の大きな特徴であり、それによって淀川の生き物は繁栄してきたのです。イタセンパラも、そんな生き物の一つでした。また、淀川の河道はそれまでの3倍程度に掘削され、それと大堰の稼動とが合わさる形で、淀川の様相は大きく変わってしまいました。もちろん、それらのおかげで、安定した水資源が確保されてきたことは事実です。大阪府営水道の取水口は守口の大日にあり、大堰の恩恵をそれほど受けているようには見えませんが、阪神水道や大阪市や吹田市の取水口の一部は、大堰の近くにあり、大堰の恩恵を受けています。

 その他に、大阪府における水道水源の安定供給のため、不安定な各市町村の独自水源から、府営水道への依存度を上げる施策が進んでおり、大阪府南部にいたっては、淀川からわざわざ水道を引くよりもと、紀ノ川からの導水が図られています。また、府営水道の一部を上水道から工業用水に転換することも実施されています。工業用水としては、過去には地下水も利用されていました。しかし、地盤沈下よる被害から、地下水のくみ上げは厳しく制限されました。そのため、今度は逆に地下水位が上昇し、その影響も出てきています。東西線、北新地駅の工事現場で大出水があり、工事を長く中断したこともありました。はたして、淀川大堰によって開発された水源は、効率よく使用されているのか、もう一度考えてみる必要があるのかもしれません。


3.城北わんどの水槽化と木津川におけるイタセンパラ生息地の保護

 城北わんどでは、今後、わんど内の水の入れ替えを促すような工作や、外来魚や外来植物の駆除を行ない続けることで、その環境をイタセンパラの生息に適したものにしてゆくそうです。いわば、わんどをビオトープ化、もっと言うならば水槽化するわけです。他方、そのような動きとは別に、淀川の支流の一つである木津川に、イタセンパラの生息地を確保し、保護してゆこうとする動きがあります。これは、先にご紹介した木村氏の働きかけによって、実現する模様です。木村氏から頂いた(11月25日消印のお手紙に同封)、淀川環境委員会からの回答の写しには、木村氏の要望をほぼ全面的に認めて実施する旨、書かれていました。城北わんどでは、今後、ますますビオトープ化、水槽化が進められてゆくことでしょう。そんな淀川下流部は、一先ず、それで対応するとして、木津川などの、淀川水系の上流部でのイタセンパラ保護が、今後進めれてゆくことになるでしょう。


4.淀川大堰の全開操作

 本年の城北わんどをめぐる報道では、淀川の様相を大きく変えてしまった淀川大堰について、ほとんど取り上げられませんでした。読者や視聴者の関心が低いからでしょう。そして、その関心の低さを受けてなされる報道が、ますます大堰への関心を失わせてゆくことでしょう。もっとも、そのような関心の有無とは別に、水資源の供給元である淀川大堰について、もし撤去しょうとする声があがったとしても、それを実現することは、とても難しいことでもあります。

 城北わんどに関する報道で目立ったものは、外来魚や外来植物についての報道です。これらの外来魚、外来植物は、広大な淀川集水域から、まさに湯水のように流れくだり、淀川大堰によってダム湖と化した淀川下流部に溜まります。もし、ここで、淀川大堰の全開操作を行なったとしたらどうなるでしょうか。大堰によって失われしまった淀川の流速が復活すれば、外来魚も外来植物も、その何割かは海へと押し流されるでしょう。

 淀川大堰の全開操作を行なうとすれば、利水の面よりも安全面での問題が大きいかもしれません。堰の操作や、それによって最も低水位となる時間帯を工夫すれば、下流部の取水口への塩害や、水需要の大きな時間帯に取水困難となるような問題はクリアできるかもしれません。しかし、急激な水位変動や、流速の変化は、淀川や、河川敷で働いたり遊ぶ人たちにとって、危険な状態をもたらすかもしれません。しかしながら、広大や淀川集水域に存在する支流、小河川、水路、溜池などで、外来魚や外来植物の駆除を行なったり、流下対策を実施することよりも、そして淀川大堰を撤去してしまうことよりも、大堰の全開操作は、ずっと現実的な試みだと、わたしには思えます。

 城北わんどを含む淀川は、もはや大堰ありきの環境となってしまいました。そこに棲む生き物たちも、そうなのでしょう。そんな中で、淀川大堰の全開操作を実施したとき、どんな影響があるのか、ほとんど未知だといえます。もっとも、堰ありきの環境となってしまった淀川の、それがどんな環境で、どんなことすればよいのか、誰にも確信はないのです。大堰の全開操作を行なえば、ダムの排砂問題と同じ様なことがおこるかも知れません。しかし、淀川の河道をそれまでの3倍にまで掘削できるのならば、ヘドロを前もって取り除くことも可能なはずです。大堰の全開操作は、たとえ一時的なものとはいえ、淀川の流速を復活させるでしょう。そしてそれが、その後の大堰閉鎖と相まって、淀川の水位や流速を変動させ、わんどの水を入れ替える効果も生まれるかもしれません。淀川大堰の全開操作は、検討に値することなのです。

 本年11月23日に、城北わんどで実施された干し上げ実験の観察会では、木村英造氏にお会いして、お話をさせていただく機会がありました。挨拶程度でしたが、その前後には、ここに記したような内容を、お手紙やメールでやり取りをさせて頂きました。木村氏からは、昨今の外来魚ばかりに特化した報道について、「〜どうも外来魚問題ばかりに集中して、イタセンの問題をおろそかにする傾向がありましたが、これは将来改めていくべきものと存じます〜」とのご返事を頂きました(11月25日消印のお手紙)。また、淀川大堰の全開操作については、「〜大堰の全開操作の件一度考えてみたいと思います〜」とのご返事を頂きました(11月27日受信のメール)。大堰の全開操作については、観察会の当日に、国土交通省近畿整備局淀川河川事務所の、河川環境課長である志鹿氏にもお話させていただきました。

 わたくしは、大阪府に在住する一市民でしかありません。しかしながら、木村氏や淀川の環境保全に努力されている方々にだけお任せするのではなく、自身にできるやり方で、各所に、淀川の環境回復について働きかけてゆきます。


2006年12月12日 辻井 豊


2006年12月29日 木村英造氏 掲載許諾済み


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