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「WWFジャパン 琵琶湖サイエンスレポート 「琵琶湖におけるオオクチバスの影響評価」の解説」
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WWFジャパン 琵琶湖サイエンスレポート 「琵琶湖におけるオオクチバスの影響評価」の解説 その1


0.はじめに

 この報告書中で解析、評価されているものは、相関の強さです。これは、例えば縦軸にホンモロコ、横軸にオオクチバスの各年度の生息量(報告中では単位努力量あたりの漁獲量)をとった場合、グラフ上にばら撒かれた点が、どれだけ曲線っぽく(または直線っぽく)集まっているかどうかを調べることでわかります。グラフ上に散らばった点が、曲線(直線)ぽっく集まっているほど、相関は強いと言えます。反対に、それぞれの点がばらばらであればあるほど、相関は弱いと言えます。ただし、相関の強弱だけでは、因果関係を反映しているとも、いないとも言えません。オオクチバスの増減と、在来魚の増減に強い相関が認められても、在来魚の増減がオオクチバスの影響によるものかどうかの判断は、また違ったデータや解析によることになります。

 この報告は、オオクチバス、ニゴロブナ、ホンモロコの漁獲データを解析し、オオクチバスの影響の大きさを評価しています。しかし、一口に漁獲データと言っても、大変に複雑なもので、それらは単純に、漁獲が行われている水域の漁獲対象魚種の生息量を反映しているわけではありません。この漁獲データの解析については「金魚すくい」を例にとり、また統計解析については「セン-ター試験(共通一次)」を例にとり、説明します。


1.「金魚すくい」と「単努力量あたり漁獲量」

 縁日の金魚すくいは、水槽(タッパー?昔はブリキだった)に泳ぐ金魚を、たくさんの人が入れ替わり立ち代りすくいます。水槽内の金魚が減れば、すくい難くなります。この、“すくい難さ”が、“単位努力量あたり漁獲量(CPUE)”と言われるものに相当します。“すくい難さ”が、時間とともにどのように変化するかを調べれば、水槽内の金魚の減り方が推測できます。

 この“すくい難さ”を計るには、以下のような尾数を数える方法が考えられます。
 ただし、以下の方法は、全てポイ(すくい網)を使います。釣竿やタモ網なんかは使いません。すなわち、「漁法の統一」(a)です。

(1).ポイを入れたある回数ごとの、すくいあげられる金魚の尾数(例えば、10回すくって1尾とか)
(2).ある時間ごとに、すくいあげられる金魚の尾数(例えば、1分すくって1尾とか)
(3).一人の人がすくいあげる金魚の尾数(例えば、ポイが破れるまでに10尾とか)

 上記に上げた方法には、問題があります。それは、人や場所によってすくい上げられる金魚の尾数に違いが出る可能性があることです。上手い人、下手な人。すなわち漁の腕前。金魚が集まっている場所、金魚が少ない場所。すなわち水域による違い。また、偶然手にしたポイの丈夫さも影響します。すなわち漁具の性能。これらは、“同時刻のデータをたくさん集めて平均する”ことで、なるべく偏りがないようにします。しかし、この平均が問題になる場合もあります。それは、同時刻のデータがたくさん集まらない場合です。
 また、傍らに恋人がいる彼氏とか、子どもに応援されるお父さんとか、すくう「人の意欲をかきたてる条件も影響するかもしれません」(b)。




WWFジャパン 琵琶湖サイエンスレポート 「琵琶湖におけるオオクチバスの影響評価」の解説 その2


2.「平均値」と「センター試験」

 大学入試のセンター試験では、試験後、平均点が発表されます。その発表と自分の採点を、2次出願の判断の材料にしたりします。センター入試の平均点は、だいたい、そのあたりの点数を取った人が一番多いような結果になります。このような場合には、自分の2次出願に平均点を知ることが役に立ちます。しかし、1000点満天で平均点が500点だとしても、0〜200点あたりに全体の50%、800〜1000点あたりに残りの50%がいた場合は、どうでしょうか。平均点を知っただけでは、自分の競争相手の数はわからないのです。

 データを単純に平均(相加平均:全てのデータを足して、足したデータの数で割る)しただけでは、そのデータの傾向は判断できません。先のセンター入試の例では、得点者が集まっている点数と、そこにどれだけたくさん集まっているかが重要になります。センター入試のように非常にたくさんの参加者がいる場合は、平均点と、得点者が多数集まっている点数が一致するのです。


3.データの細かさとデータのばらつき

 1に上げた(1)〜(3)の方法は、上にゆくほど多くのデータを集め平均することになります(同時刻のデータが増える)。ですから、センター入試の例のごとく、上手く行きそうに思えます。しかし、ここにも問題があります。それは、(1)〜(3)の方法の上にゆくほど、一つのデータに現れる金魚の尾数が少なくなることです。そうすると何が困るのか。金魚がどこに集まっているか、これは時間とともに変化します。他にも、ポイの劣化、疲労など、これらの“計られない影響”は、金魚の尾数が少ないほど、データそのものに大きく反映されてしまいます。「漁獲数が少ないと、平均値にしめる不確定な要素が大きくなり、データの信頼性が低下するのです」(c)。




WWFジャパン 琵琶湖サイエンスレポート 「琵琶湖におけるオオクチバスの影響評価」の解説 その3


4.「琵琶湖におけるオオクチバスの影響評価」を読む。

(1).参考にするデータの選定−エリと小糸網を選ぶ

 これは、1.(a)「漁法の統一」にあたります。報告書の本文中(P.3)において、代表的な漁法をクラスター分析して、エリと小糸網を選択しています。クラスター分析とは、この場合、各漁法における漁獲魚種を並べて、漁獲魚種が似ている漁法を選んでいます。そして、選ばれた漁法は、ニゴロブナやホンモロコの主要な漁獲方法であるとしています。


(2).単位努力量として経営体数を選択し、単位努力量あたり漁獲量を算定する

 これは、1で述べたものです。年間漁獲量/その年の経営体数(漁業経営者の数)を選んだ訳です。報告書の本文中(P.3)には、「努力量の単位となりそうな「動力船の数」や「経営体数」などの指標データと両漁法の漁獲データとの相関分析を行った結果、「経営体数」の相関が高く、ニゴロブナやホンモロコの漁獲データを解析する際には、もっとも適切な努力の単位であることが、統計解析によって明らかとなりました」とあります。また、3.(c)「漁獲数が少ないと、平均値にしめる不確定な要素が大きくなり、データの信頼性が低下するのです」にあるとおり、分母を、出漁日数などにように細かくすれば良いわけではありません。しかし、より細かい分母は、「動力船の数」以外は記述されていないことから、どれほどの場合について検討を行ったかは、わかりません。


(3).オオクチバスの漁獲漁に、買い取り価格が影響しているかどうか判断する

 これは、1.(b)「人の意欲をかきたてる条件も影響するかもしれません」について調べたものです。報告書の本文中(P.5)には、「漁師の漁獲インセンティブとなるkg あたりの買取価格の有無が漁獲量のデータに影響が与えるかどうかについて統計解析を行いました。その結果、「買取価格の有無」は、オオクチバスの漁獲データと相関(ピアソンの相関係数0.689:1%水準で有意(両側))が有り、買取価格が無いときの漁獲データと有る時の漁獲データを一様に扱うことはできないことが統計解析によって明らかとなりました。そのため、オオクチバスのデータを漁獲資源データとして用いて統計解析を行う際には、少なくとも買い取り価格の有るときと無いときの2 つに分ける必要が有ることが判明しました。ただし、「価格差」そのものによる漁獲量への影響は、有意な相関がみられませんでした」と、あります。また、3.(c)「漁獲数が少ないと、平均値にしめる不確定な要素が大きくなり、データの信頼性が低下するのです」にあるとおり、細かく場合わけすれば良いわけではありません。しかし、より細かい場合わけの具体例は記述されていないことから、どれほどの場合わけについて検討を行ったかは、わかりません。


(4).オオクチバスの漁獲データの推定〜単位努力量あたり漁獲量を算定する

 報告書の本文中(P.6-8)に、記述があります。(3)の分析結果にならって、買い取り価格のある場合とない場合に分けて推定しています。単位努力量として経営体数を選択し、単位努力量あたり漁獲量を算定しています。データがない部分(あるいは十分でない)は、線形補完と呼ばれる方法で補われています。これは、グラフの曲線(あるいは直線)を延長したりする方法とほぼ同じです。こうやって、ニゴロブナ、ホンモロコの単位努力量あたり漁獲量と、オオクチバスの単位努力量あたり漁獲量が、各年度ごとに算定されたことになります。




WWFジャパン 琵琶湖サイエンスレポート 「琵琶湖におけるオオクチバスの影響評価」の解説 その4


(5).ニゴロブナの単位努力量あたり漁獲量が年毎に変動する様子と、オオクチバスの単位努力量あたり漁獲量が年毎に変動する様子の関係を調べる

 報告書の本文中(P.9-10)に、記述があります。これは、例えば、縦軸に「年度毎の1経営体数あたりのニゴロブナの漁獲量」をとり、横軸に「年度毎の1経営体数あたりのオオクチバスの漁獲量」をとって、どれだけ曲線(あるいは直線ぽっく)、グラフ上に点が集まっているかを解析したものです。解析の結果、負の相関(本文中では影響と言っている)がある可能性が高いとなっています。これは、グラフに描かれた点の集合が、オオクチバスの増加とともに、ニゴロブナが減少しているように集まっているが、それほど明確な集まり方ではない、ということです。


(6).ホンモロコの単位努力量あたり漁獲量が年毎に変動する様子と、オオクチバスの単位努力量あたり漁獲量が年毎に変動する様子の関係を調べる

 報告書の本文中(P.10-12)に、記述があります。これは、例えば、縦軸に「年度毎の1経営体数あたりのホンモロコの漁獲量」をとり、横軸に「年度毎の1経営体数あたりのオオクチバスの漁獲量」をとって、どれだけ曲線(あるいは直線ぽっく)、グラフ上に点が集まっているかを解析したものです。解析の結果、6割程度の負の相関(本文中では影響と言っている)が認められるとなっています。これは、グラフに描かれた点の集合が、オオクチバスの増加とともに、ホンモロコナが減少しているように集まっていおり、点の集まりぐらいが、全体の散らばり具合の6割程度になっている、ということです。


(7).まとめ

 報告書の本文中(P.12-13)には、「、オオクチバスの存在はホンモロコに「負の影響がある」言えます。さらに、ホンモロコに与える影響のうち6割前後はオオクチバスのものだといえます。しかし、ニゴロブナに関しては「負の影響がある可能性が高い」とまでしかいえない結果となりました」とあります。相関ではなく、影響という言葉を使っています。なぜかは、本文中には記述がありません。


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