×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

「オオクチバスによる食害発生のメカニズム」
目次へ戻る
外来魚問題他の資料集の目次に戻る


「今日の資料 その1」


「沖縄生物教育研究会誌 第21号」 1988年11月発行
 大城ダムの魚類相とブラックバスの食害による影響 幸地良仁 (P.45-57)

 以下にダイジェストを掲載します。引用した文中には、バス釣り人とって、かなり気分を害する表現が何度も登場します。しかし、考察の進め方自体は、調査によって得られたデータに沿って行われており、調査デザインも無理のないものとなっています。また、後ほど(明日ぐらい)に触れますが、大阪府淡水魚試験場が滝畑ダムなどで行った陸封アユ試験や、淀川で長期間に渡って継続されている精密な調査にも、今回の調査報告と同様な事例が掲載されています。かなり前に管理人さんがリンクされた日比谷壕における調査でも、やはり同じような事例が掲載されています。ちなみに、日釣振は、沖縄県を、北海道と同じく聖域とし、ブラックバスの拡散を防ぐべき地域としています。本文中では、ブラックバスの影響について考察する魚類に、ティラピアとゲンゴロウブナを選んでいます。著者は、この2種も移入種であることは了解しており、この2種への影響を調べることで、ある程度普遍的と考えるに妥当な結論を導き出しています。なお、やむを得ず省略した本文中や図版にも、考察を進めるにあたって重要な箇所が多く、機会のあるかたは、ぜひ原文を読まれることをお勧めします。わたしが閲覧した場所は以下の通りです。

「きのくに志学館」
http://www.wakayama-lib.go.jp/
「和歌山県立図書館」
http://www.wakayama-lib.go.jp/library/
 資料案内/雑誌/雑誌(逐次刊行物)所蔵リストの、一般雑誌の、あ行にあります。
http://www.wakayama-lib.go.jp/library/03-bookinfo/03-06-maglist/03-06-tikuzi-a.html




「今日の資料 その2」


 はじめに(P.45)
 ***以下要約***
 この調査は、筆者が沖縄県南風原高等学校の生徒を指導し、ほぼ一年間に渡って実施したものである。
 ***以上要約***

 大城ダムの概要(P.45-46)
 ***以下引用(ほぼ全文)***
 大城ダムは、沖縄県の南部、大里村字大城の東方約500m地点にある。このダムは農業用貯水ダムとして1964年6月に造られたものである。堤長200m、堤高10.4m、有効貯水量251.000立方メートル、水は緑褐色を呈しており、透明度は1m未満である。大城ダムのあるところは、雄樋川の源流付近である。雄樋川は、船越、前川、玉泉洞の近くを流れ下って、具志頭村の港川漁港へ流出する。雄樋川は長さ約8km、玉泉洞付近は河川勾配が急で滝状になっているところもあるが、その上流の流れはゆるやかである。小さな支流の湧水付近は、水がきれいなことろもあるが、本流(特に玉泉洞付近)は、畜舎排水や家庭排水などによって著しく汚れているところもある。増水時には、大城ダムから雄樋川へ越流するが、ふだんはダムの排水溝は水がかれており、大城ダムは雄樋川から隔離された状態になっている(図1)。
 ***以上引用(ほぼ全文)***

 調査方法(P.46)
***以下引用(ほぼ全文)***
 調査期間は、1987年11月から1988年8月である。毎月1回、タモ網、小型引網、投網、刺網、釣りによって魚類を採集し、10%ホルマリン液で固定して持ち帰り、種別個体数、体長組成、消化管内容物、成熟卵の有無、体内卵数、腸長比などを調べた。また、ダムを30の方形区(50mX50m)に分け、各方形区において、タモ網で仔稚魚を20回すくいとり、各方形区ごとの仔稚魚の出現個体数も調べた。調査に使用したタモ網は、口径30X30cm、網目1X1mmである。この調査は、1988年の4月24日と5月29日の2回行った。ダムの魚類調査は原則として毎月1回としたが、必要に応じて1月に数回行ったこともある。調査時間は午前9時から午後7時頃までである。ダムの最深部は9m程度あるので、調査時にはボートを使用した。なお、ダムと河川の魚類相を比較するために、1988年8月には、雄樋川の魚類調査も行った。
***以上引用(ほぼ全文)***




「今日の資料 その3」


 調査結果と概要(P46-57)

 (1)大城ダムの魚類相(P.46-49)
***以下引用(一部のみ)***
 今回の調査で確認した雄樋川水系の魚類は19科29種である(表1)。雄樋川の河口部には、トビハゼ、テンジクカワアナゴ、チチブモドキ、ヒナハゼ、スナゴハゼ、ゴマアイゴ、アマミイシモチ、リュウキュウドロクイなど汽水性の魚類が生息しており、ギンガメアジ、イトヒキヒイラギ、ミナミクロダイ、オニカマス、ボラなど海産魚類の稚魚や幼魚も見られる。また、ティラピアやグッピーなどの純淡水魚も生息しており、この水系で魚類の種類数がもっとも多いところである。玉泉洞から大城ダムまでの区間の本流で確認されたのは、ティラピア、ギンブナ、カダヤシ(タップミノ―)、グッピーの4種だけである。ティラピアとグッピーは個体数が多く、ギンブナとカダヤシは少ない。細流の湧水付近では、ヨシノボリやオオウナギなど清流を好む魚類も採集されたが、水が汚れている本流では、それらの魚類は全く採集されていない。本流ではヌマエビ類やテナガエビ類も確認することができなかった。水が著しく汚濁しているために、両側回遊性のハゼ類やエビ類は遡上しないのであろう。大城ダムでは、ティラピア、ブラックバス、コイ、ゲンゴロウブナ、マグナエンスの5種が確認された。1986年頃まではメダカも生息していたが(幸地1986)、今回の調査では全く採集されていない。聞き取り調査によるとギンブナも生息していたようだが、それも採集されていない。最近、釣り人もそれらの魚類を見ていないようであるので、絶滅したのではないかと思われる。
***以上引用(一部のみ)***

 (2)ブラックバスの産卵と食性(P.49-54)

  (2−1)産卵期(P.49-50)
***以下引用(極一部のみ)***
 大城ダムにおいて、ブラックバスの仔魚を確認したのは、1988年の4月から5月までの期間である(図3)。
***以上引用(極一部のみ)***

  (2−2)産卵場所(P.50-52)
***以下引用(極一部のみ)***
 〜ブラックバスはどこにでも産卵するのではなく、底面が泥や砂からできている岸近くの比較的浅い水草帯が産卵場所として選ばれている。大城ダムには、ブラックバスの産卵場所としての諸条件を備えているところは多くない。そのような理由で、大城ダムにおけるブラックバスの産卵場は、図5に示す2ヶ所に限られているいるのであろう。
***以上引用(極一部のみ)***




「今日の資料 その4」


  (2−3)成長による食性の変化(P.52-54)
***以下要約***
体長1.0cm〜2.0cm(10個体):動物プランクトンが多く、他に水生昆虫など
体長3.0cm〜6.9cm(15個体):水生昆虫が多く、他に動物プランクトン、魚類など
体長7.0cm〜9.9cm(26個体):水生昆虫が多く、他に魚類、陸生昆虫など
体長10.0cm〜19.9cm(21個体):水生昆虫が多く、次に魚類、陸生昆虫など
体長20.0cm〜37.9cm(5個体):魚類が多く、他に水生昆虫、陸生昆虫など
***以上要約***
***以下引用(極一部のみ)***
 捕食者であるブラックバスの大きさと捕食されている魚類の大きさの関係についてみると、ブラックバスの成魚の胃に入っている魚類は、主に体長5〜10cm程度の大きさのものであり、体長10cm未満のブラックバスの胃から仔稚魚だけである。また、ブラックバスの成魚は、比較的大きい魚類を1〜2尾食っているのもいるが、胃がからっぽになっている固体もいる。それに対して、体長10cm未満のブラックバスの胃は、内容物が充満しており、胃がからっぽになっている個体はほとんどいない。胃の内容物は主に水生昆虫であるが、10尾以上の仔稚魚を食っていることもあり、ブラックバスの未成魚による食害も無視することはできない。
***以上引用(極一部のみ)***

  (2−4)季節による食性の変化(P.54)
***以下要約***
1987年11月22日、16個体、体長7.9〜32.1cm:水生昆虫が多く、他に陸生昆虫など
1988年04月24日、07個体、体長8.5〜32.5cm:水生昆虫が多く、他に魚類など
1988年05月29日、08個体、体長8.2〜34.1cm:魚類が多く、他に水生昆虫など
1988年06月12日、06個体、体長6.0〜34.1cm:魚類が多く、他に水生昆虫、陸生昆虫など
1988年07月10日、07個体、体長6.6〜35.0cm:水生昆虫が多く、他に魚類、陸生昆虫など
1988年08月29日、18個体、体長6.5〜31.2cm:水生昆虫が多く、他に魚類、陸生昆虫、動物プランクトンなど
***以上要約***
***以下引用(一部のみ)***
 ブラックバスは5月から7月頃までは、魚類を食っている個体も多いが、胃から検出された魚類は、ほとんどが仔稚魚や幼魚である。また、胃から検出された魚類の中には、ティラピア、ゲンゴロウブナ、ブラックバスなど種々の仔稚魚が混入している。このことは、各種魚類の卵がふ化して、えさとして手ごろな大きさの仔稚魚や幼魚が出現すると、ブラックバスはそれを待ちかまえていたかのように食いあらしいることを示唆している。即ち、ブラックバスの食害は、各種魚類の繁殖期にもっとも激しくなるのである。
***以上引用(一部のみ)***




「今日の資料 その5」


 (3)ブラックバスの食害による各種魚類の個体群への影響(P.54-56)
***以下引用(ほぼ全文)***
 ブラックバスは、大城ダムにおいても魚類をかなり捕食していることは明らかになったが、ブラックバスの食害によって各種魚類の個体群へどの程度影響をおよぼしているのか、この問題について検討してみたい。大城ダムには、数年前までギンブナも生息していたといわれており、1986年頃まではメダカも生息していたことは確かである(幸地1986)。ところが、両種とも今回の調査では確認されていない。ギンブナやメダカが姿を消した理由として、水が汚れたためにすめなくなったのではないかとも考えられるが、大城ダムにはギンブナと同じ科に属するコイやゲンゴロウブナは生き残っているので、水質汚染とは関係なさそうである。水質汚染によるのではなければ、ギンブナやメダカの生存をおびやかす者がいるにちがいない。このダムにいる大型動物は、魚類のほかには、ゼニガメがまれに見られる程度であるので、魚類がその容疑者として浮かんでくる。ティラピアやゲンゴウブナなどと、食物や生活場所をめぐっての争いともかかわりがあるかも知れないが、ブラックバスは小魚を手あたりしだいに食いあらしているので、ブラックバスの食害による可能性がもっとも大きい。大城ダムにおける魚類相の推移についてみると、メダカやギンブナなど小魚がいなくなり、現在残っているのはティラピア、コイ、ゲンゴロウブナなど大型魚類だけである。それでは、ブラックバスの食害は大型魚類の個体群にはさほど影響をおよぼしてはいないのか、さらに検討をすすめてみたい。
 大城ダムで、1987年11月から1988年8月までの期間に採集した主要魚類の体長組成を図6に示してある。ブラックバスは、仔稚魚から成魚にいたるまでの各発育段階の個体が含まれており、成魚よりも未成魚や仔稚魚の割合がはるかに多い。ところが、ティラピアとゲンゴロウブナは、ほとんどが成魚で、仔稚魚や未成魚はごく少数の個体が採集されているだけである。成魚の腹を開いてみると成熟卵を持っている個体はいる。それらの魚類は、産卵はしているが仔稚魚が育たないことになる。先の述べたように、ブラックバスは4月から8月頃までは各種魚類の仔稚魚や幼魚をかなり食っており、そのために仔稚魚が育たないのであろう。1988年8月29日に、ブラックバスがいる大城ダムとブラックバスのいない雄樋川で、ティラピアを採集し体長組成を比較してみた(図7)。大城ダムでは成魚だけが採集されたが、雄樋川では各発育段階の個体が採集されている。しかも、雄樋川では、成魚よりも稚魚や未成魚がはるかに多い。それらの調査結果から、大城ダムにティラピアやゲンゴロウブナの仔稚魚や未成魚がきわめて少ないのは、それらの魚類が産卵しないからではなく、ふ化した仔稚魚がブラックバスによって捕食されるために育たないのだといえよう。仔稚魚が育たなければ個体群が衰退することは述べるまでもない。即ち、大城ダムのティラピアやゲンゴロウブナは、今後減少の一途をたどることになるであろう。このように、ブラックバスはメダカやギンブナなどのように小魚だけに影響を及ぼすのではなく、ティラピアやゲンゴロウブナのような大型魚の仔稚魚も捕食し、個体群を維持することが困難になる程度の重大な影響を及ぼしてるいるのである。

***今日の資料その6へ続く***




「今日の資料 その6」


***今日の資料その5からの続き***

 さて、問題のブラックバスは、今後どうなるのか考えてみたい。ブラックバスは体長3cm程度までは動物プランクトンを食っており、その後、9cm程度までは主に水生昆虫を食っている。魚類の繁殖期には仔稚魚を食うものもいるが、主食は水生昆虫であるので、ティラピアやゲンゴロウブナが減少しても生活に大きな支障はきたさないであろう。10cm以上になると、魚類もかなり食っているので、食われる立場にある魚類が減少するとえさ不足になることが予想される。また、ブラックバスは共食いもしているので、えさが不足すると、成魚によって捕食される仔稚魚の割合も、さらに大きくなるにちがいない。その結果、ブラックバスの個体群も衰退し、ティラピアやゲンゴロウブナのあとを追うようにして、次第に減少するものと思われる。一般に、捕食者と被捕食者は周期的に個体数の変動をくり返すことが知られている。大城ダムにおける魚類相の推移についても、さらに長期的立場からみると、捕食者であるブラックバスが減少すると、被捕食者にあたる魚類の中には再び個体群を持ち直すことができる種もいるかもしれないが、メダカやギンブナなどはすでに姿を消してしまっている。このように、小規模な水域に、大型肉食魚であるブラックバスが放流されると、その食害によって個体群を維持することが困難な種もあり、生物群集が著しく撹乱されることになる。
***以上引用(ほぼ全文)***




「今日の資料 その7」


 (4)移入種対策として(P.56-57)
***以下引用(一部)***
 これまで述べたように、大城ダムにおいては、ブラックバスが種々の魚類を食いあらし、生存をおびやかしている。沖縄県では、現在大城ダムと恩納ダムの2箇所だけに放流されており隔離された状態になっているが、他の水域へも放流されると、在来の生物群集を撹乱し、有用な生物に大きな害をおよぼすとこが予想されるので、他の水系への移植は厳につつしむべきである。
***以上引用(一部)***

 摘要(P.57)
(1)1987年11月から1988年8月までの期間、大城ダムの魚類調査を行い、ブラックバスの食害による影響について、若干の知見を得た。
(2)大城ダムにおけるブラックバスの産卵期は、日本本土よりも約1ヶ月はやく、4月上旬から6月までの期間である。
(3)ブラックバスの食性は、一般に、成長するにつれて、動物プランクトンから水生昆虫へと変わり、さらに水生昆虫から魚類へと移り変わる。
(4)ブラックバスが魚類をもっとも食害するのは、5月・6月頃である。
(5)大城ダムには、ギンブナも生息していたといわれており、1986年まではメダカも生息していたが、今回の調査では確認されていない。メダカやギンブナの消失は、ブラックバスの食害による可能性が大きい。
(6)大城ダムでは、ティラピアやゲンゴロウブナなどの仔稚魚も育たないので、それらの魚類も次第に減少することが予想される。
(7)このように、ブラックバスはメダカやギンブナなどのような小魚なけでなく、ティラピアやゲンゴロウブナのような大型魚の個体群も撹乱するので、他の水域への移植を禁止すべきである。

 引用文献(P.57)
幸地良仁,1985 沖縄県におけるメダカ類3種の種間関係,生物研究(日本生物教育会誌)(21) P.2-18
幸地良仁,1986 沖縄島の河川魚類の現状 沖縄生物教育研究会誌(19) P.10―30
幸地良仁・大城勝,1987 ダム建設によるヨシノボリ属魚類への影響,沖縄生物教育研究会誌(20) P.8-23
宮地伝三郎・川那部浩哉・水野信彦,1976 原色日本淡水魚類図鑑,保育社 P.320-321
諸喜田茂充,1984 帰化動物,沖縄の生物,日本生物教育会沖縄大会記念誌 P.377-383
杉浦宏,1987 カラー熱帯魚・淡水魚百科,平名社 P.268
大谷和夫・菊川義仁,1980 ブラックバス,日本の淡水生物―侵略と撹乱の生態学―,川合禎次・川那部浩哉・水野信彦編,東海大学出版会 P.20-29
大里村,ため池調査表(資料)




 以上

 解説、他の文献、メールへのご返事、レスなどはまた明日に。。。


外来魚問題他の資料集の目次に戻る
目次へ戻る