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「アカメの遺伝子解析について」
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「アカメの遺伝子解析について」
〜サンプルの採集・取扱・保存と、その概念、そして課題〜

(マイクロサテライト解析による集団間の関係の推定)


1.サンプルの採集・取扱・保存

1−(1).サンプルの採集

図−1

 サンプルは、図−1のように、背鰭の後縁部より小指の爪ほどの大きさを切り取り、サンプルとします。切り取った部分は再生されます


1−(2).サンプルの取扱

 切り取ったサンプルは、キッチンペーパーなどでヌルをふき取り、直射日光のあたらない場所で半日ほど乾燥させます。乾燥時には、ホコリや虫がつかないように注意して下さい。乾燥させたサンプルは、ジップロックなどで密封のうえ、サンプルの収集を行なっておられる方へ、送付して下さい。サンプルの扱いに、薬品が塗布されたガーゼなどは使用しないで下さい。また、サンプルを送付する際には、サンプルを収集した場所、日時、サンプルを採取した魚の体長などを記録し、サンプルに添付して下さい。複数のサンプルを送付される場合には、サンプルを密封した袋とデータを記録した用紙に番号を振るなどするのがよいでしょう。


1−(3).サンプルの保存

 無水エタノールで液浸標本にすると長期間の保存が可能です。しかし、可燃性の液体を大量に取扱うことは危険です。また、液体窒素や、ドライアイス程度の低温での保存も、一般の方には難しいことです。まずは、−20度程度で冷凍保存とし、2,3日ごとに標本の状態を確認して、変色などの劣化が見られるものから、液浸標本としていったほうが良いかもしれません。サンプルの保管は、どのサンプルが何時、どこで獲れた、どんな魚のものなのか、見分けがつくように、通し番号をつけるとよいでしょう。


2.遺伝子解析の概念
〜何がわかるのか〜


図−2

 サンプルがある程度集積された段階で、保管されているサンプルにつけた通し番号を、地図上にプロットしたとき、図−2のようになりました。地図上の番号は、その番号のサンプルを採取した魚が、採捕された場所を示しています。


2−(1).解析結果とそこから推測されるアカメの生態(例1)
〜回遊範囲が狭く、産卵場所もそれぞれの地域ごとにあると推測される例〜

図−2−(1)−A

 遺伝子解析の結果、図−2−(1)−Aのようになりました。それぞれに、大きな枠(同じ色)でまとめられたサンプル同士は、近い血縁関係にあります。これを地図上に再度プロットしてみます。

図−2−(1)−B

 図−2−(1)−Bを見ると、近い血縁関係にあるサンプル(同じ色の番号)が、ほぼ同じ水域に分布しています。このような解析結果が出た場合、アカメは比較的狭い範囲を回遊し、産卵場所も、それぞの回遊範囲内ごとにある可能性が考えられます


2−(2).解析結果とそこから推測されるアカメの生態(例2)
〜回遊範囲が広く、産卵場所はどこか一箇所にあると推測される例〜

図−2−(2)−A

 遺伝子解析の結果、図−2−(2)−Aのようになりました。それぞれに、大きな枠(同じ色)でまとめられたサンプル同士は、近い血縁関係にあります。これを地図上に再度プロットしてみます。

図−2−(2)−B

  図−2−(2)−Bを見ると、近い血縁関係にあるサンプル(同じ色の番号)が、さまざまな水域に分散して分布しています。このような解析結果が出た場合、アカメは広い範囲を回遊し、産卵場所は、どこか一箇所にある可能性が考えられます


3.課題
〜Q&A方式による提示〜

3−(1).標本を送ればすぐに分析してもらえるのですか?

 Ans.すぐには分析できません。

 この手法(マイクロサテライト解析)では、魚種ごとに特殊な薬剤(プライマ−)を設計し、作成、使用します。これまで、一度でもアカメが解析されていれば、すでに開発済みの薬剤を使用できます。ですが、今のところ(2007年01月19日現在)、わたくしが調べた範囲では、アカメの解析事例はありません。従って、アカメを解析した経験のある研究者もいません。


3−(2).分析にはとてもお金がかかると聞きました。

 Ans.お金がかかります。

 遺伝子分析に用いる装置、薬剤、検査キットなどは高価です。


3−(3).すぐに分析できないのであれば、サンプル集めをしても意味が無いのでは?

 Ans.意味はあります。

 サンプルは、注意深く保存すれば、長期に保存できます。サンプルが集まっていることは、研究者がアカメの遺伝子解析に手をつける動機となります。特に、アカメのように、ほとんどが釣りで捕獲される魚は、解析して意味ある量のサンプルを集めるには時間がかかります。ですから、サンプル集めを先行させることには意味があるのです。


3−(4).結果をすぐに見れないのであれば、サンプル集めをする釣り人が飽きてしまうと思います。

 Ans.常に釣り人の関心を引くようにする必要があります。

 口コミや、雑誌、ネットなどで、定期的に呼びかけ、お互いに声を掛け合うような、関心を引き続ける工夫が必要です。


3−(5).サンプルを集めるには手間がかかります。釣りをしながらするのは大変です。

 Ans.ご理解をお願いいたします。

 アカメ、特にその成魚は、釣り以外ではほとんど採捕されません。釣り人の協力が必要なのです。遺伝子解析は、アカメの生態を解明する大きな力となります。アカメの生態解明には釣り人の力が大きく役に立つのです


3−(6).サンプルの保存と整理がとても大変だと思います。

 Ans.とても大変です。

 サンプルの保存と整理には、労力と費用がかかります。もし、できるのであれば、複数の人で担当地域を決めるなど、役割分担をして、負担を分散させることが必要かもしれません。




 水産上、有用な魚種や、希少魚の、遺伝子解析による集団間の関係の分析は、国のプロジェクトや、研究者らの課題として、現在、集中的に取り組まれてます。今はまだ、アカメの遺伝子解析(マイクロサテライト解析)をやろうとする研究者はいません。しかしながら、現在の国の施策や、研究者らの向かっている方向から、何時の日にか、必ず、アカメは遺伝子解析の対象となるでしょう。その日を、一日でも早く実現するためには、サンプルの収集と、それが行なわれていることを、積極的にアピールしてゆく必要があります。釣り人の手で。なぜなら、アカメのサンプル集めは、釣り人にしかできないのですから。



2007年01月19日 辻井 豊
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